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背徳の主
第7章 顧客NO 040503C 桂奈
駐車場に車を停めると、しばらく想いを巡らす。

今この瞬間の寂しさを、包み込んでしまうものが欲しい。

エンジンを止め、ドアを開けて駐車場に出た。

4月の心地よい風が、本来なら桂奈の心身を優しく包み込んでくれるのだが、今は単なる風に過ぎない。

独りになってから早一月が過ぎた。

桂奈の心の中には依然として大きな空虚がある。

ふと顔を上げると「Mid Night」の入り口があった。

桂奈は心の隙間を埋める何かを探していた。

「Mid Night」の店内に入る。

個性豊かなランジェリーがところ狭しと並び、女性客達が楽しそうに下着を探す。

桂奈も本来はこの女性客と同じように、男が喜んでくれる下着を選ぶはずだった。



桂奈が男と付き合いだしたのは1年前

桂奈は量販店で販売促進課に属し、ポップや販売物を担当していた。

男は商品課にいて、仕入や店舗陳列に携わっていた。

男は販売物の作成を依頼する時、必ず桂奈の所にやってくる。

桂奈の所で男は冗談を言ったり、メーカーサンプルをこっそり渡す。

年齢が2歳上の男に桂奈は親近感を覚えるようになった。


ある日、男はいつもの様に販促物を依頼にきた。

桂奈は販促内容をメモに記入していると、

「今度何処か行かないか?」

「いいわよ。」

桂奈は別に構わなかった。

男は店舗の休日を指定し、桂奈を迎えに行くことになった。

桂奈は男が既婚者であることは知っていた。

ただ、ドライブしたり食事する位はいいと思っていた。


当日男は桂奈の家の近所まで迎えにきた。

桂奈は久しぶりの男とのデートに心が弾んだ。

車中では男が冗談を連発して桂奈を笑わせ、楽しい雰囲気で幾つか観光地を巡る。

途中見晴らしの良いレストランで食事をし、それから海岸線を走った。

男は海岸線の道路のパーキングで車を停めた。

「お前を抱きたい。」

男は突然言い出した。

「だめよ。」

桂奈は動揺しながら男の言葉に驚いた。

「そうだね」

男は苦笑いしながら、車のエンジンを掛けて舞を送り届けた。

あれ日依頼、男は桂奈の部署に来なくなった。

しかしその日が突然やってきた。

桂奈が男の部署での応援となり、残業で二人が残った。

業務が終了して

「家まで送るから。」

桂奈は何故かこの言葉を待っていた。








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