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溺愛 ~ どうか 夢のままで ~
第5章 狼の本性

廊下は一気にざわめきを増した。

呼び止めた彼女の声量もだが、それ以前に、腕を掴んだ拍子に手放した教科書や筆箱が床に散らばったからだ。


腕を引かれた不破は咄嗟に振り返り

…ついでに、床に落ちた教科書に目をやる。


彼を引き留めた花菜はというと、ほんの数秒後には我に返っていた。


「…ッ…あ…ごめんなさい! 急に…!!」

「……」

「ごめんなさい……!!」

「お前…──俺を誘ってるのか」

「え?」


我に返った途端、わかりやすく慌てて…

落ちた教科書を拾うためにその場に座りこむ、挙動不審な女。


「──…俺に惚れたのか?」


「ほ…れた…?」


教科書を拾っていた彼女の手は不破の一言で停止した。

彼の声だけがふわふわと空中に浮かぶような奇妙な沈黙が、花菜の周りにできあがる。


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