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友達のままがいい
第2章 現在…
「痛ったぁ~~指噛んだぁ~」

あろうことか、頬をつついていた指を噛まれる。
少し痛いぐらいの甘噛みだ。
指を引っ込めようとするが、腕をつかまれ噛まれたままだ。
睨み付けて応戦するが離す気がないのか微動だにしない。
横腹をくすぐっても、鼻をつまんでも離さない。
これは本格的にまずい…
と思ってると天の助け

「あらぁ~相変わらず仲いいわねぁ~。はい。ビールとおつまみね。半個室だけど程ほどにね」

女将さんがウィンクをして去っていく。
恥ずかしい。
穴があったら入りたいとはこの事だ!と学習する。
しかし、まだ噛まれたまま

お前はスッポンか!!

と突っ込みたくなるが、ここは私が折れるしかないと思いとどまる。
ここで反論しても口で勝てるわけもない。
一度たりとも勝った試しがないのだから。
ここは非礼を詫びるのが一番の逃げ道。

「ごめんなさい。私が悪かったです…本当にごめんね」

そう謝れば、先ほどまでスッポンのように噛み付いていた口から指が開放される。
そして、何もなかったかのようにつまみに手を出す始末。
いったい、彼は何をしたかったのか…
本気で怒っていたわけじゃないのは分かる。
だけど噛み続ける意味が分からない。
分からないけど、私はうれしかった。
ツンツンと頬をつついただけでもどきどきだったのに、噛まれた。
甘噛みされた。
別にマゾではないけど、なんかうれしかった。
恋人でもない、ただの友達。
触れたいけど触れられない。
抱きしめたいけど抱きしめられない。
いつも前を歩く彼に手を伸ばして触れたいと思っても、その手を引っ込めてしまう。
いや、引っ込めなければならない。
その時の、寂しさ。
泣きたくなる。
そんな時は、いつも洋服の上から触れて、素肌に触れて、彼を感じたいと願うけど…
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