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それを、口にすれば
第17章 それを、口にすれば
しかし、優雨の気持ちは複雑だ……。
やはり今回のことが自分の中でまるで消化しきれない。

穏やかな気持ちになれる日が来るのだろうか……?
全てを、自分を……許せる日が来るのだろうか……?

それに先ほどの結城夫妻のやり取りを聞く中で、優雨だけは理沙子の気持ちを痛いぐらいに感じ取っていた。

〝理沙子は結城を深く愛している〟

そのことにはっきりと気付いてしまった今、自分は一体どうしたらいいのだろう……?

それに、結城が一人になったからと言って、それは本来なら優雨には関係のないことだ。

じゃあ私と一緒に……などと考えることは出来ない。

もしそんなことをしたら、理沙子を深く傷付けてしまうことになるだろう。
いくらあんな企てをした人でも……そのせいで愛する夫を奪われていいという理由にはならない。

どうしても、出来ない……。

「私……考えたいことがいっぱいあります……」

「うん……」

「自分の人生、どうしたらいいのか。どうしたいのか」

「うん」

「自分の足できちんと立ちたいんです」

「……分かっているよ」

全てを包み込むような眼差し……。
結城はそれ以上の言葉を口にすることは無かった。

(結城さん……)

確かなのは、結城への気持ちだけ。

優雨は窓の外の夕暮れの景色をただずっと眺めていた。
……それを今、口にするのは狡い気がして。








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