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夜伽月 よとぎづき 
第8章 鬼灯
…懐かしい匂い。

…景?

月は薄っすらと眼を開けた。月の頭の側には頭があった。

「えっ…!」

ゆっくりと離れる。

…は…裸っ!なんで?!

何も着ていない事に気がついて,慌てて着物を探す月。

「あ…起きなさった」

ごしごしと眼を擦って起きて来たのは小鳥だった。一緒に寝ている小鳥迄裸だ。

「ちょ…これは、どういうこと?」

小鳥は裸のまま、月に飛びついた。

「夜伽様〜!心配してたんだ。無事で良かった!」

ーーードタン。

勢いよく 冷たい板の間に倒れた。

「昨日は氷のように体が冷たくて、お婆様に言われて、あたしが一晩中温めたんだ。着替えたら、飯を持ってくるよ。ちょっと待っててくだせぇ」

バタバタと着替え始め、飛び出していった小鳥。そこで初めて綺麗に畳まれた月の着物を見つけて袖を通した。指先が少し痺れて、喉が渇いていた。ゆっくりと立ち上がり腰紐を結ぶが手が思うように動かない。

ーーーすっ。

音もなく開いた襖の先には暖かいお茶を持ったかんざし婆さんが立っていた。

「あんたって子は、無茶苦茶だよ」

「かんざし婆さん…心配を掛けて本当にごめんなさい」

月は崩れる様にその場に座り手をついて謝った。するとかんざし婆は、-お茶が載った盆を畳みに上に置くと、月ににじり寄った。ふと顔を月があげた。


ーーーペチン。

月の広いおでこに指を押しつける様にかんざし婆は、平手で叩いた。

「い...たい」

かんざし婆は、月の顔を覗き込んだ。

「もう何処にも一人で行くんじゃないよ?」

「はい」

「わかったら、さっさとこれを飲むっ」

もわもわと先程から異様な臭いが立ち込め始めたと思っていたが、かんざし婆が持ってきたお茶がその原因だった。

「え?」

差し出された茶碗には、なみなみと泥の様なものが注がれていた。

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