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夜伽月 よとぎづき
第1章 青い月
「ど…どこが!あのひねくれ者と仲良くなんて出来ません」
かんざし婆は、声を出して笑った。
「随分はっきりと物を言うね。まぁ兎に角、この屋敷からは出ちゃいかん。分かったね?村人とも話しちゃいかん」
…それじゃ何も分からないじゃない。
「それから…。」
かんざし婆は、きちんと座り直し言葉を区切った。
「離れにある、透の部屋には入るんじゃないよ」
庭の向こうの小さな離れを指差した。
「それ以外は好きに使いな」
…誰が頼まれたって行くもんですか。あんな男、会いたくもない。
月は、畳に手をついてお礼を言った。
「どうぞよろしくお願い致します」
「ところで、あんた…名前は?」
「伊藤月です。月と書いて“あかり”と読みます」
「ふーん。おかしな名前だね。思うに、村人にはあんたは人魚のままで通した方が都合が良いね」
「でも…」
「それなら世間知らずでも、話の筋は通るからね」
本当にそれで大丈夫なのだろうか?と月は不安になった。もし嘘だとばれたら…その時こそ、大変なことになりそうな気がしたからだ。
「蝮和尚に頼んであんたが、仏門に入ったことにして、尼にでもして貰おうか」
かんざし婆は、腕を組んで暫く考え込んでいた。
…ブツモンって…そんないい加減で良いの?
なんだか大雑把すぎる様な気もした。
「良い名前をあの生臭坊主に考えて貰おうかね。それが良い」
かんざし婆は、ひとりで納得しているようだ。
「尼になれば、馬鹿な輩も手が出せまい」
…馬鹿な輩?
人魚の肉の話と良い、月は少々不安になり、かんざし婆の言う通り、暫く大人しくしていた方が良いかも知れないと思った。
かんざし婆は、声を出して笑った。
「随分はっきりと物を言うね。まぁ兎に角、この屋敷からは出ちゃいかん。分かったね?村人とも話しちゃいかん」
…それじゃ何も分からないじゃない。
「それから…。」
かんざし婆は、きちんと座り直し言葉を区切った。
「離れにある、透の部屋には入るんじゃないよ」
庭の向こうの小さな離れを指差した。
「それ以外は好きに使いな」
…誰が頼まれたって行くもんですか。あんな男、会いたくもない。
月は、畳に手をついてお礼を言った。
「どうぞよろしくお願い致します」
「ところで、あんた…名前は?」
「伊藤月です。月と書いて“あかり”と読みます」
「ふーん。おかしな名前だね。思うに、村人にはあんたは人魚のままで通した方が都合が良いね」
「でも…」
「それなら世間知らずでも、話の筋は通るからね」
本当にそれで大丈夫なのだろうか?と月は不安になった。もし嘘だとばれたら…その時こそ、大変なことになりそうな気がしたからだ。
「蝮和尚に頼んであんたが、仏門に入ったことにして、尼にでもして貰おうか」
かんざし婆は、腕を組んで暫く考え込んでいた。
…ブツモンって…そんないい加減で良いの?
なんだか大雑把すぎる様な気もした。
「良い名前をあの生臭坊主に考えて貰おうかね。それが良い」
かんざし婆は、ひとりで納得しているようだ。
「尼になれば、馬鹿な輩も手が出せまい」
…馬鹿な輩?
人魚の肉の話と良い、月は少々不安になり、かんざし婆の言う通り、暫く大人しくしていた方が良いかも知れないと思った。