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夜伽月 よとぎづき 
第2章 水琴窟
…信心深い人達って言ってたよね。

「蝮和尚さん、赤ちゃん達と史様のこと任せて貰えないでしょうか?」

「え…」

蝮和尚は真っ赤な顔で月を見た。

…随分と出来上がっちゃってる。大丈夫かしら。

「お願いします…悪いようにはしませんので…。」

かんざし婆さんの方をちらりと蝮和尚は見た。

「わ…儂は…一向に構わんが…」

「じゃあ決まりですね!」

月は布に包んだ赤ちゃんを抱えた。

「史さんの2人の赤ちゃんを助けるために…この子をお借りしますね」

月は深々と史に頭を下げた。

「あ…ちょっと待て…死んだ赤子なぞどうするつもりだ?」

「心配しないで、かんざし婆!悪い様にはしないわ。それでは早速お母さんたちのところへ行きましょう」

月はお時を連れてさっさと部屋を出て行ってしまった。

「…何という無鉄砲な奴じゃ!飛び出していきおった」

蝮和尚は再び酒を飲んだ。

「ほら…生臭!ぼさっとしてないで、あたしたちも行くんだよ!」

「武家の奥方じゃぞ?下手したら、捕まる」

「その時は、その時じゃ。あんたもあたしもその時はただじゃすまんだろうね。まぁみーんな“お道連れ”じゃな」

かんざし婆さんは、鼻息荒くどすどすと大股で廊下を歩いていく月の後を追った。


「ありゃまぁ…人魚様というよりは、歩く姿は力士様じゃな。かんざし婆…産婆稼業よりも、あれには作法をもちっときちっと教えないと、尼にはさせられんぞ。こりゃ…」

「あれは…確かに炊事洗濯どころか手習いだってさっぱりだ。だけどね…頭の良い子だよ。きっと何か良い策を思いついたのさ。ほらっ!無駄口は良いから、あんたも早く来るんだよ」

かんざし婆さんの顔には余裕すら見えた。その自信はどこからきたのかねと、蝮和尚は呆れながらも、どっこいしょと重い腰を上げてふたりの後に続いた。




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