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伝わらない想い
第4章 幸せを願う
電車が駅に着くと、小さな人の塊が降りていき、少し車内は余裕を取り戻した。

「茜」
彼女を呼ぶ声の方を見ると、明らかに俺を睨む男の姿があった。

「純...」
俺のこの怒りは間違いなくこいつに対してのもので。

「陸」
敵意を前面に押し出してくる純に、更に俺の怒りは大きく膨れ上がった。


そんなに彼女のことが心配なら手を離すなよ。
お前にとって大事な存在なら...。
だったら...「お前がちゃんと守ってやれよ」。
そんなことを言ったら純がキレることも解っていた。
それでも、彼女の幸せを願っていながら、俺の口からその言葉は無残にも吐き出されていた。

「お前に言われたくない」
純の目が暗く怪しくこちらを睨み付けてくる。
「こいつは、茜は、俺のだから」

解ってる。
俺が邪魔者だっていうことは解ってるんだ。

ただ、彼女の涙を見たくない。
彼女のこの瞳を暗く染めないで欲しいだけなんだ...。


俺たちの周りに漂う重苦しい空気を他所に、電車がまた徐々にスピードを落としていった。
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