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恋いろ神代記~神語の細~
第2章 桂楫
 桂とは、月に生えるという伝説上の木のことだ。常世にある植物なのか、だとしたらどれほど清廉として、由々しいまでに美しい木なのか九ノ兄には想像もつかなかったが──だがそれを削いで造られた楫は、美しいだけの手では握ってはいけないような心地もした。
 道先を預けてくれる貴人があるならば、どのような激流の中でも、どのような濁流の中でも、絶対に迷わないように。惑わないように。見えぬ道を見極め、正道を行くならば、時にその貴人にさえ抗って舟を漕ぎ続けなければならない。
 目を閉じてもいけない。曇らせてもいけない。自らを律して進む厳しい道。先の見えぬ道。それでも力強く、楫を握って。
 「今の優沙様ならば……あの方達の善き助けになるかと存じます」
「でしょう? きっと月読様も、それをお望みだと思うの。いいえ、あの方はあの晩以来、ずっとずっとそれを待ち続けていらっしゃったはずだわ」
まさに小波が弾けるような、楽しげな琴の音(ね)。いつかあの月の神にも届くようにと研鑽を重ねてきた優沙だったが、奥社入りには未だ及ばず、年ごと行われる試験にも勝ち抜けていなかった。
 一人のために奏でられ過ぎている。数多の神々に捧げられる奥社の神事には適さない、叙情的に過ぎる音だと評された。
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