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恋の行方を探してください【完結】
第47章 【四十七話】誘拐
     *

 目が覚めたら、今までいた『山小屋』とは違うところだった。

「った」

 ズキリと痛む頭を押さえながら美哉は身体を起こした。
 明楽紫紺と名乗った男性は、美哉と呼んでいた、と記憶をなくした美哉はぼんやりと思った。
 眠っている間、ずっとだれかの夢を見ていた。背が高くてちょっと顔の濃い、男性。嫌な感じはしなくて、もっと見ていたいと、男性嫌いであるはずの美哉は思った。
 そういえば、紫紺が側にいても、鳥肌が立たなかった。
 二人の雰囲気はすごく似ている、と美哉は感じた。

 それよりも、と考え事から現実に戻ってきて、ふと周りを見回した。
 ここはどこなのだろうか。
 天蓋付きのベッドの上に寝かされていたらしい美哉は、ぐるりと部屋全体に視線を向けた。
 ベッドもだけど、置かれている家具なども超高級っぽい物たちで、急に居心地が悪くなってきた。紫紺がいたような木の温もりが感じられる狭い部屋の方が、落ち着くものなんだと美哉は新たな発見をした。
 ふと身体を見ると、ピンク色のシルクのパジャマに着替えさせられていた。だれが着替えさせたのだろうかと思うと、恥ずかしくなった。
 それにしても、とにかくここは落ち着かない。
 美哉はベッドから降りて、外を確認するために窓に近寄った。カーテンを開けると、外はもうすっかり暗くなっていたため、ここがどこなのか、分からなかった。
 美哉は諦めて、カーテンを閉めると、ドアが開く音がした。
 そちらに視線を向ける前に、ぞくりと全身に痛いほどの鳥肌が立ったのが分かった。入って来たのは男性なのだろう。

「目が覚めたか」

 美哉が起きて、窓辺にいたことに気がついた男性は、楽しそうに口を開いた。
 美哉は振り返りたくなかったが、背中を向けたままはさすがに失礼だと思い、声の方へ身体を向けると、濃いグレイのスーツを着た男性が立っていた。
 一重の瞳に、眉は薄めであったけれど綺麗に整えられ、薄い唇をした、見知らぬ男性。男性の視線は、美哉を品定めするように細められていた。

「あの……あなたは、だれ、ですか」
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