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恋の行方を探してください【完結】
第50章 【五十話】忠誠の儀*藪田
 目の前に立つ由臣の笑い方を見て、美哉は疑惑を深めた。
 由臣はよく笑うけれど、こんな風に顔を歪めて笑うことはなかった。

「オレが由臣ではないのなら、誰だと言うんだ?」
「それは……! 由臣さんではないそっくりさんです!」

 美哉がそういえば、廊下の角からパチパチと拍手のような音が聞こえて来た。
 そして角を曲がって現れたのは……。

「由臣さんが二人っ?」

 由臣が双子だと聞いたことがない。しかし、角から現れた由臣は手にあの薄紫色のカードを持っていて、本物だと暗に言っていた。

「藪田(やぶた)」

 由臣の低い声に目の前の由臣はびくりと肩を揺らした。本物の由臣ならば、やらないことだ。

「俺に変装して、なにをしようとした」
「…………」
「芽依(めい)にでも言われたか」

 芽依って誰? と美哉は思ったが、今はそれどころではなかった。

「芽依さまは関係ない」
「それならば、単独でか? それとも、弓月か日下部に買収されたか?」
「それもない」
「……なるほど。おまえは御庭番として失格だな」
「っ!」
「与頭(くみがしら)を追い出して、なにをしようとした? 御庭番は与頭がいてこその組織のはずだ」

 由臣のその一言に、藪田と呼ばれた由臣そっくりの男性は、目をつり上げた。

「御庭番など、要らない!」
「要らないと言うのなら、そこにいる紫紺のように抜ければいいだけだろう」
「抜けたら芽依さまは」
「別におまえがいなくても、芽依はやっていく。おまえは一番やってはいけないことをやった」

 目の前の由臣は青い顔をして、由臣と反対へと走り出した。
 が、反対側からは伊吹と吟太が現れ、由臣の振りをしていた藪田を捕まえた。

「逃げられると思っていたのか」
「オレは! 芽依さまがいれば充分なんだ!」

 吟太に羽交い締めにされた藪田はそう喚いていたが、ずるずると美哉と紫紺が泊まっていた部屋に連れ込まれた。本物の由臣が美哉と紫紺に目線で合図をしてきたので、部屋に入る。

「美哉、済まないが、この藪田と忠誠の儀をしてくれるか」
「……え、由臣さんとですか?」
「いや、これは俺に見えるけれど、藪田であって……」
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