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狂い咲く花
第10章 一、猩々木 - 祝福
こうなることは誰もが予想していたことだった。
葉月だけではなく父様も母様も、自分の幸せより人の幸せを願うだろうと予想はついていた。
それでも自分の思いを、幸せを押し殺してほしくないと願ってしまう。

「お前はそれでいいのか?お前の幸せはどうなる」

父様が美弥の思いに反して口を開く。

「父様…昔、私の願いを何も聞かずに聞いてあげるって言った事あったわよね…何もわがままもおねだりもしない私の為に…」

「ああ…お前が願うことがあれば何も聞かずに頷いてやろうと決めてる」

「だったら、これは駄目かな?葉月と麻耶の結婚を許してやってほしい…この願いを叶えてもらえませんか?」

「美弥…」

「父様。私はこの家族が大事なの。大切なの。麻耶にはいつも笑っていてほしい…同じ年とは思えないほど子供で、たまにむかつくこともあるけど…それでも大事な妹なの…父様と母様の子供なの…私の幸せを望んでくれるように麻耶の幸せも望んであげて?みんなが笑っている姿を見るのが私の幸せなのよ」

美弥の言葉に誰もが言葉を失った。
全てを何もなかったかのように、全てが当たり前のように道筋を立てて誘導していく。
誰一人、否と言えないように…

「美弥…少し時間をくれ…お前の気持ちはよく分かった…けど…俺の気持ちがついていかねー…お前の願いに黙って頷くのは約束する…だから時間をくれ」

頭を掻きむしりながらそれだけを告げて部屋を後にする。
それを追うかのように母親も部屋を出て、葉月と美弥を二人っきりにさせる。
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