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狂い咲く花
第10章 一、猩々木 - 祝福
「ねぇ…葉月…最後に…口づけをしてくれますか?それで私は生きていけるから…駄目?」

葉月の顔が歪んでつらそうな顔をする。
だけど彼はそっと美弥に口づけをした。
軽く触れるだけの口づけを。
唇離し、葉月が口を開こうとする。

「美弥…ご…」

「謝罪の言葉なんていらないわ…その変わり…必ず幸せになってね…私の選択が間違っていなかったのだと教えて」

謝罪の言葉など聞きたくはなかった。
先ほど言った言葉は嘘でもない。
だけどまだ心がついていかない。
どんなに強がってみても謝罪の言葉を受けたら全てがなくなってしまいそうで怖くなった。

「美弥…」

「麻耶と葉月が結婚したら私は葉月の姉様ね…だったら…これからは姉様と呼んでもらおうかな?」

つとめて明るく話し、戸惑っている葉月を無視して話していく。

「だって、私は葉月の姉…名前で呼んだら返事してあげないわよ」

躊躇する葉月。
だけど美弥は引かなかった。

「…分かった…美弥…姉さん…ありがとう」

美弥の覚悟を悟ってか、それだけ口にして葉月は黙って部屋を出て行った。
一人残された美弥の瞳からは大粒の涙が溢れ出す。
ずっと我慢していた涙、が一人になった美弥に押し寄せる。

「だって…あなたに名前で呼び続けられるのはつらい…ごめんね葉月…ごめん」

とめどなく流れる涙を隠すことも泣く一人静かに泣き続けた。



第一部完










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