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蜘蛛♠
第6章 能力者

「へぇ~~。坂本さんの彼女ってどんな人なんですか~?」
架純が坂本の彼女に興味を示した。

恭介は腕を組んで考えた。
何度か一緒に遊んだが、深くはわからなかった。
見た目はただのギャル、中身は坂本から聞く話ではあまりよろしくないようだ。
確かに、坂本に彼女が出来た当初、恭介は例の心臓の痛みを覚えた。
それはいい方の直感ではなく、悪い方の直感。
それが当たってか知らぬが、それからの坂本はまるで何かに洗脳されてるかのような目をしていた。
「どんな人?う~ん、何とも言えないかなぁ!気は強そうだな!」
友達の彼女を悪く言うのも気がひけるので、当たり障りのないようこたえた。

恭介は目の前に置かれたビールに手を伸ばす。
フタを開ける直前で気づいた。
これを飲んでしまっては坂本を止めに行くことは確実に出来なくなる。
それを計算して架純はビールを出したのかは分からない。
すると、またもや胸の痛みが恭介を襲った。
思わず心臓を押さえる恭介。
この痛みの最中に必ず聞こえてくる声がある。低くかすれた男の声………。
(心臓を捧げよ…………)
もう何十回と聞いてきた声に、今更驚くことはないが、今回の痛みはかなり強烈だった。

「恭介さん!大丈夫ですか!!??」
架純が心配そうに恭介を見つめる。

架純にはちょっと心臓に病気を抱えてると、付き合う前に説明してあった。
「大丈夫だ!!!それより架純。俺ちょっと車に忘れ物したから取ってくるわ!!」
言って恭介は立ち上がった。

不安そうに見つめる架純。
「忘れ物?私取ってきましょーかぁ?」

「いや、大丈夫だ。心臓の薬だからさ!ちょっと待っててくれ」

恭介は壁に掛けてあった上着を取り、玄関へと向かった。
視線は感じるものの、追いかけてくる気配はなかった。
架純には申し訳ないが、ここは嘘をつくしかない。
車で坂本家に向かい、ここに帰ってくるまでおよそ20分。いや、坂本を説得したら20分じゃきかない。
強引に坂本を拉致るしかない。
とにかく23時に、あの招待状に記された場所に坂本を行かせなければいいだけだ。
まだ坂本が、出発してないことを祈り、恭介は玄関を開けた。

外はかなり冷え込み、上着を羽織っても寒いくらいだった。
駐車場までは数秒でたどり着く。目の前にはもう恭介の愛車、オデッセイが見えている。
そこから鍵を開け、車まで走った。

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