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蜘蛛♠
第6章 能力者


同時刻
21:50分。

恭介と架純は浮かない顔をして、時間が過ぎるのをただただ待っていた。
いや、待つ事しかできなかった。
テーブルに腰掛け、頭を伏せている恭介。そしてそれを見つめる架純。
坂本はコインの決断の後、すぐに恭介の家を出ていった。

恭介は頭を抱えた。
これで本当によかったのだろうか。架純の言うとおり、コインの判断に任せてしまったが、あそこは自分を犠牲にしてでも止めるべきだったのではなかろうか。

坂本の元に送られた謎の招待状。
ただのイタズラでは済まない気がしてならない。
何か大事なものを失ってしまいそうな感覚。
恭介は昔から第6感が優れ、大きな出来事が起こる前兆を読み取ることが出来た。
それはいい事の時もあれば、悪い事の時もある。
その時は決まって心臓に激痛が走るのだ。
だがこの激痛こそが、今回の恭介の悪い予感が的中する証。
本人はまだ覚醒してないがこれこそが泉川恭介の「能力」だった。

恭介はうなだれながら時計に目をやった。
後、少しで22時になろうとしている。
23時に坂本は招待状の場所に行くことになっている。
坂本の家から招待状に記載された住所に向かうには、車で約40分と予想した。
恭介の家から坂本家まで車で約10分。
恐らく坂本はまだ現場には向かってはいない。今からここを出て坂本家に行けば何とか止める事ができる。

だが、それには大きな問題がある。
どうやって架純を納得させるかだ。
まだ付き合って3ヶ月だが、架純の性格はほぼ熟知している。
きっと何を言っても架純を納得させる事は出来ない。可愛い顔して人一倍頑固なのだ。

恭介の異変に気づいたのか、架純は突然立ち上がった。
「恭介さん!飲みましょ~!!考えても仕方ないですよ!きっと坂本さんは無事に帰って来てくれます!」
言いながら冷蔵庫からビールを2本取り出した。

恭介の前にビールを置き、架純は目の前の席へ座った。
「そんなに落ち込まないでください恭介さん。私はただのイタズラだと思います!恭介さんが行ったところで、きっと何も変わらないですよ!!坂本さんの意思はダイヤモンド並みの固さでした」

「あぁ……俺もあんな坂本さんは初めて見たよ。多分………彼女と上手くいってないんだろうな……」
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