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暁の星と月
第3章 暁の天の河
…遠くから足早にこちらに近づく靴音が響いてきた。
「…暁…!…良かった。ここにいたのか…」
礼也がほっとしたような顔で現れた。
「兄さん!」
暁の顔がぱっと陽が射したかのように明るくなった。
「一人にして済まなかったね。なかなか抜けられなくて…」
梨央以外の人間をこんなに優しく心配そうに気遣う礼也は初めてだ…と月城は驚いた。
「月城さんがこちらに案内して下さったんです。美しい薔薇を拝見出来てとても楽しかったです」
きらきらと瞳を輝かせて礼也に報告する暁は、大好きな父親に甘える子供のようだった。
礼也は月城を向き直り、笑顔で礼を言う。
「月城、ありがとう。君のお陰で暁が寂しい思いをしないで済んだよ」
「とんでもございません。…暁様に喜んでいただけて何よりです」
月城は穏やかに微笑む。
そして、薔薇の群生に手を差し伸べた。
「よろしければお好きな薔薇を花束にして差し上げます。梨央様が、今日お見えになる縣様の弟様に薔薇を差し上げたいと仰せられていたのです。…生憎お風邪をお召しになってしまわれましたが、代わりに私が託されました」
礼也は嬉しそうに頷いた。
「…梨央さんのご好意に心より感謝するよ」
「…さあ、暁様。どうぞ、お選びください」
遠慮していた暁がそれでは…とはにかみながら薔薇を選びに行った。
その後ろ姿を見つめながら礼也が呟いた。
「…暁は苦労ばかりしていた弟でね。貧しい環境で育って学校も碌に通えていなかった。…だからこれから私がありったけの愛情を注いで彼を立派に育てて行きたいと思っている」
月城は礼也に対する尊敬の念を改めて強く感じた。
「暁様はお幸せですね。こんなにもお優しくご誠実なお兄様がいらして…きっと素晴らしい紳士になられることでしょう」
「ありがとう、月城。今日暁が嫌な思いをしないで済んだのは君のお陰だ。…しかし、これから社交界に顔を出すようになって、暁は自分の出自の件できっと嫌な思いをすることもあるだろう。だから私は誰が見ても文句のつけようのない立派な青年に育て上げるつもりだ。…どんなに厳しくしても…。それが彼の為だからだ」
月城は頷いた。
「ご立派でございます」
暁が庭師に切って貰った白薔薇の花束を抱えて笑顔で戻って来た。
「白薔薇を頂きました。兄さんは白薔薇がお好きだから…」
礼也は破顔した。
月城は美しい兄弟を微笑みながら見つめた。
「…暁…!…良かった。ここにいたのか…」
礼也がほっとしたような顔で現れた。
「兄さん!」
暁の顔がぱっと陽が射したかのように明るくなった。
「一人にして済まなかったね。なかなか抜けられなくて…」
梨央以外の人間をこんなに優しく心配そうに気遣う礼也は初めてだ…と月城は驚いた。
「月城さんがこちらに案内して下さったんです。美しい薔薇を拝見出来てとても楽しかったです」
きらきらと瞳を輝かせて礼也に報告する暁は、大好きな父親に甘える子供のようだった。
礼也は月城を向き直り、笑顔で礼を言う。
「月城、ありがとう。君のお陰で暁が寂しい思いをしないで済んだよ」
「とんでもございません。…暁様に喜んでいただけて何よりです」
月城は穏やかに微笑む。
そして、薔薇の群生に手を差し伸べた。
「よろしければお好きな薔薇を花束にして差し上げます。梨央様が、今日お見えになる縣様の弟様に薔薇を差し上げたいと仰せられていたのです。…生憎お風邪をお召しになってしまわれましたが、代わりに私が託されました」
礼也は嬉しそうに頷いた。
「…梨央さんのご好意に心より感謝するよ」
「…さあ、暁様。どうぞ、お選びください」
遠慮していた暁がそれでは…とはにかみながら薔薇を選びに行った。
その後ろ姿を見つめながら礼也が呟いた。
「…暁は苦労ばかりしていた弟でね。貧しい環境で育って学校も碌に通えていなかった。…だからこれから私がありったけの愛情を注いで彼を立派に育てて行きたいと思っている」
月城は礼也に対する尊敬の念を改めて強く感じた。
「暁様はお幸せですね。こんなにもお優しくご誠実なお兄様がいらして…きっと素晴らしい紳士になられることでしょう」
「ありがとう、月城。今日暁が嫌な思いをしないで済んだのは君のお陰だ。…しかし、これから社交界に顔を出すようになって、暁は自分の出自の件できっと嫌な思いをすることもあるだろう。だから私は誰が見ても文句のつけようのない立派な青年に育て上げるつもりだ。…どんなに厳しくしても…。それが彼の為だからだ」
月城は頷いた。
「ご立派でございます」
暁が庭師に切って貰った白薔薇の花束を抱えて笑顔で戻って来た。
「白薔薇を頂きました。兄さんは白薔薇がお好きだから…」
礼也は破顔した。
月城は美しい兄弟を微笑みながら見つめた。