この作品は18歳未満閲覧禁止です

  • テキストサイズ
暁の星と月
第6章 その花のもとにて
礼也と二人で会場に戻ると、大紋が心配そうな表情で、暁に話しかけてきた。
「どうした?暁…。顔色が良くないよ」
暁は微笑みながら首を振る。
「…いいえ、大丈夫です」
礼也が優しく暁の髪をくしゃくしゃと掻き回すように撫でる。
「人いきれに酔ったそうだ。…暁は昔から、パーティがあまり得意ではなかったからな」
慈愛に満ちた眼差しが切ない。
…もうこんな表情も笑みも全ては梨央さんのものになるのだ…。

「…礼也は何だか嬉しそうだな?…何か良いことがあったのか?」
大紋の探るような言葉に苦笑しながら、口を開こうとしたその時…
会場の中心から、澄んだ美声が響き渡った。
「…会場にお集まりの紳士、淑女の皆様にお伝えしたいことがございます。少し、お時間とお耳を拝借してもよろしいでしょうか?」

笑いさざめいていた来賓達が一斉に声の主、北白川伯爵に注目する。
…北白川伯爵は、最新流行の舶来の明るいチャコールグレーのジャケットに、芥子色のアスコットタイというややカジュアルだが洗練された服装に身を包んでいる。
もう四十の声は聞いている筈だが、恐ろしく若々しくその貌は西洋人のように彫りが深く、端麗であった。
伯爵は会場を見渡し礼也を認めると、艶めいた目元で笑い、手招きをした。
「礼也くん、こちらに来てくれ」
礼也は、一瞬戸惑ったような貌をしたが、すぐに暁に自分のシャンパングラスを渡すと微笑みながら目配せをして、皆の注目を浴びながら颯爽と伯爵の方へと歩いて行った。
雪子が興味深々の眼差しで、礼也を目で追う。
「一体、何かしら?」
暁は黙りこくったままだ。
大紋が、普段と様子が違う暁を気遣わしげに見つめる。
「…どうした?暁…何かあったのか?」
小声で尋ねる大紋に、暁は仄かに笑った。
「…もうすぐ判りますよ…」
「…え?」

礼也が伯爵の傍に到着する。
伯爵の隣には、ひっそりと寄り添うように佇む梨央がいた。
梨央は、到着した礼也を見るとはにかむように笑い俯いた。
そんな梨央を礼也は優しく…熱を帯びた眼差しで見つめる。
暁の胸がずきりと痛む。

伯爵が口を開く。
「…こちらにおられる皆様は、我が家にも関係が深く、日頃から大変に親しくしていただいている方々ばかりです。
…ですので非公式ではございますが、本日ある嬉しい報告を申し上げたいと思います」
/479ページ
無料で読める大人のケータイ官能小説とは?
無料で読める大人のケータイ官能小説は、ケータイやスマホ・パソコンから無料で気軽に読むことができるネット小説サイトです。
自分で書いた官能小説や体験談を簡単に公開、連載することができます。しおり機能やメッセージ機能など便利な機能も充実!
お気に入りの作品や作者を探して楽しんだり、自分が小説を公開してたくさんの人に読んでもらおう!

ケータイからアクセスしたい人は下のQRコードをスキャンしてね!!

スマートフォン対応!QRコード


公式Twitterあります

当サイトの公式Twitterもあります!
フォローよろしくお願いします。
>コチラから



TOPTOPへ