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暁の星と月
第6章 その花のもとにて
伯爵は礼也をまるで息子を見るように親しげに見つめてから口を開く。
「…こちらにいる縣礼也くんは、私の親友の息子で先日、爵位を継いだ青年です。
ご覧の通りの大変な美男子、そしてご存知の方も多いかと思いますが、縣財閥の若き社長として日夜世界を飛び回っている才能豊かな…またバイタリティー溢れる頼もしい青年です。
…彼は私の最愛の娘、梨央が6歳の時から仕事柄外国暮らしが長い私に代わり、後見人の役を真摯に全身全霊で努めてくれました。
…身体が弱く大人しい梨央が今まで何の懸念もなく健やかに成長することが出来たのも、全ては礼也くんのお陰です。ありがとう、礼也くん」
伯爵の誠実な言葉に、礼也は感極まったように言葉を詰まらせ、頭を下げる。
会場の来賓達も静まり返り、伯爵の言葉を聞き入っていた。
伯爵は少し悪戯めいた口調に変調する。
「…さて、この素晴らしい非の打ち所のない青年は、いつしか私の大切な娘に恋をしたようです」
梨央が白い頬を薔薇色に染めて、伯爵の袖を引く。
微笑ましい光景に、会場からは笑いが漏れた。
「…しかし、紳士な彼は梨央が一人前の娘に成長するまで辛抱強く待ち続けてくれました。…実に立派な青年です。…私なら恐らくはロミオのように窓辺から愛を囁いていたでしょう」
苦笑する礼也を梨央は恥ずかしそうに見つめる。
「…そして梨央は17歳になりました。…先程、礼也くんから、梨央にプロポーズをしたとの報告がありました。…梨央もそれを承諾したと…。
…今日は本当に喜ばしい日です。こんなにも立派な青年が最愛の娘、梨央と結ばれるなど…全く夢のような日です。天国にいる亡き妻、梨央の母親もきっと喜んでくれているに違いありません」
梨央は涙ぐむ。
伯爵が優しく梨央の手を取り、その手を礼也の大きな手と結ばせた。
礼也が愛の篭った眼差しで梨央を見つめる。
梨央が礼也を見上げ静かに微笑んだ時、庭の弦楽四重奏が陽気に結婚行進曲を奏で始めた。
会場からは温かい拍手が湧き、梨央は恥じらうように俯いてしまう。
礼也は梨央を優しく抱きしめた。
伯爵が美しい婚約者たちを慈愛の眼差しで見つめながら、言葉を結んだ。
「…この若く美しい恋人達に幸多かれと願います。
そして、この若き二人に皆様より温かいご支援とご声援を賜われますよう、心よりお願い申し上げます」
会場からの温かい拍手はいつまでも鳴り止まなかった。
「…こちらにいる縣礼也くんは、私の親友の息子で先日、爵位を継いだ青年です。
ご覧の通りの大変な美男子、そしてご存知の方も多いかと思いますが、縣財閥の若き社長として日夜世界を飛び回っている才能豊かな…またバイタリティー溢れる頼もしい青年です。
…彼は私の最愛の娘、梨央が6歳の時から仕事柄外国暮らしが長い私に代わり、後見人の役を真摯に全身全霊で努めてくれました。
…身体が弱く大人しい梨央が今まで何の懸念もなく健やかに成長することが出来たのも、全ては礼也くんのお陰です。ありがとう、礼也くん」
伯爵の誠実な言葉に、礼也は感極まったように言葉を詰まらせ、頭を下げる。
会場の来賓達も静まり返り、伯爵の言葉を聞き入っていた。
伯爵は少し悪戯めいた口調に変調する。
「…さて、この素晴らしい非の打ち所のない青年は、いつしか私の大切な娘に恋をしたようです」
梨央が白い頬を薔薇色に染めて、伯爵の袖を引く。
微笑ましい光景に、会場からは笑いが漏れた。
「…しかし、紳士な彼は梨央が一人前の娘に成長するまで辛抱強く待ち続けてくれました。…実に立派な青年です。…私なら恐らくはロミオのように窓辺から愛を囁いていたでしょう」
苦笑する礼也を梨央は恥ずかしそうに見つめる。
「…そして梨央は17歳になりました。…先程、礼也くんから、梨央にプロポーズをしたとの報告がありました。…梨央もそれを承諾したと…。
…今日は本当に喜ばしい日です。こんなにも立派な青年が最愛の娘、梨央と結ばれるなど…全く夢のような日です。天国にいる亡き妻、梨央の母親もきっと喜んでくれているに違いありません」
梨央は涙ぐむ。
伯爵が優しく梨央の手を取り、その手を礼也の大きな手と結ばせた。
礼也が愛の篭った眼差しで梨央を見つめる。
梨央が礼也を見上げ静かに微笑んだ時、庭の弦楽四重奏が陽気に結婚行進曲を奏で始めた。
会場からは温かい拍手が湧き、梨央は恥じらうように俯いてしまう。
礼也は梨央を優しく抱きしめた。
伯爵が美しい婚約者たちを慈愛の眼差しで見つめながら、言葉を結んだ。
「…この若く美しい恋人達に幸多かれと願います。
そして、この若き二人に皆様より温かいご支援とご声援を賜われますよう、心よりお願い申し上げます」
会場からの温かい拍手はいつまでも鳴り止まなかった。