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暁の星と月
第1章 暗闇の中の光
暁は居間の柱時計を何度も見ながら窓辺に佇んでいた。
ここからなら、礼也の車がすぐに目に入るからだ。
…まだかな…兄さん…。
時計は9時を指していた。
「…暁様だけでもお先に晩餐を召し上がりませんか?」
生田にそう勧められたけれど、暁は首を振った。
「兄さんと一緒にいただきます」
どんな御馳走も一人で食べては味気ないからだ。

…奥様のお屋敷に行かれると言っていたけれど、何かあったのだろうか…。
もしかして、僕のことで揉めているんじゃないだろうか…。
暁の胸は不安で押し潰されそうになる。

…その時、黒い大きな舶来の車が車寄せに滑り込んでくるのが、目の端に見えた。
…兄さんだ!
暁は居間を飛び出し、玄関ホールへと駆け出した。

暁が玄関に着いた時、丁度礼也が生田にドアを開けて貰い中に入ったところだった。
暁の姿を見つけた礼也が柔かに笑った。
「兄さん…!」
気がつくと、暁は礼也の胸に抱きついていた。
礼也は驚かずに、そのまま暁を抱きとめてくれた。
「ただいま、暁」
…兄さんはどうしてこんなに良い薫りがするんだろう。
暁はうっとりと礼也のシャツにそっと頬を押し当てる。
「礼也様のお帰りを待つと仰って、暁様はまだお食事を召し上がっていらっしゃらないのです」
生田がさり気なく告げる。
「それはすまなかったね。お腹が空いただろう?」
暁は嬉しげに首を振り、礼也を見上げる。
「大丈夫です。…兄さんが無事に帰ってきてくれて、嬉しいです!」
礼也は愛しげに暁の髪を優しく撫でる。
「ありがとう。…さあ、食事にしよう。待たせたね」
大食堂へと促されるのを暁は一瞬足を止め、恐る恐る尋ねた。
「…あの…奥様は…僕のことを…何と仰いましたか?
…僕のことで、兄さんは奥様と揉めませんでしたか?」
…自分のことはなんと言われても構わない。
でも、自分のことで礼也が母親と仲違いをするのだけは嫌だった。
暁の真摯な眼差しから、礼也は心の内を察知する。
だから優しくその華奢な肩を抱き締める。
「…お前は何も心配するな。私はお前を守り、育てると決めたのだ。だからお前はここで新しく生まれ直すのだ。縣暁として…もう何を恐れることもなく、伸び伸びと前を向いて生きて行くのだ」
そして
「私とともに…」
を付け加えた。
それを聞いた暁は息を呑み、また新しい涙を流して、礼也に苦笑されながら頭を撫でられるのだった。
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