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暁の星と月
第7章 愛と哀しみの円舞曲
月城は少しも怯まずに冷静に、しかし暁を見つめて声をかける。
「暁様!馬をお止めください!怪我をされたらどうするのですか⁈」
暁は月城を睨んだ。
「放っておいてくれ!関係ないだろう、僕がどうなろうと」
鞭をくれ、更にアルフレッドを促す。
馬首一つ月城の馬より抜け出した。
…と、その瞬間、汚泥のような窪地の泥濘に脚を取られたアルフレッドが嘶き、前足を高く上げ、暴れ出した。
「危ない!」
暁の華奢な身体が馬上から投げ出されるのと、月城が手綱を放し、暁の身体を空中で受け止めるのがほぼ同時であった。
月城は暁をしっかりと抱き締めると、苔生した地面に転がった。
転がりながらも月城は腕の中の暁をしっかり守り切る。
平地の草叢でようやく二人の身体は止まった。
素早く月城は起き上がり、暁に声をかける。
「暁様!暁様!大丈夫ですか⁈」
秋の日差しの下、白皙の美貌は玻璃のように脆く儚げに見え、月城は息が詰まる。
薄い蒼白い瞼がゆっくりと開かれる。
煌めく黒い瞳は潤んでいて…月城は暁が泣いているのかと思った。
暁はじっと月城を見つめた。
無防備なまでの美しい瞳…。
なぜだか月城は無性に腹が立ち、叫んでいた。
「なぜあのような無茶をなさるのですか⁈…万が一のことがあったら…‼︎」
美しいが悲しげな色を湛えた瞳を逸らして、呟く。
「…死んでも良かったのに…」
「…⁈」
「…死んでも良かったのに…君のせいで死に損なった…」
乾いた笑いを漏らす暁が胸に詰まる。
「…暁様…」
「…もう大丈夫だ。…馬を…アルフレッドを探しに行かなくては…君の馬も…」
起き上がろうとする暁の肩を抱いて止める。
「すぐに動かれてはなりません。…馬は大丈夫です。ここの馬場には慣れておりますから、すぐに戻ってまいります」
「…でも…伯爵の馬に何かあったら君の責任になってしまう…」
月城を気遣い、立ち上がろうとしてふらついた暁を抱きとめる。
「…大丈夫です。ジークフリートは絶対に外へは出ません。…それより…少し休みましょう。
…失礼いたします」
一言断るが早いか、月城は両腕に軽々と暁を抱き上げた。
驚いた暁が、慌ててもがく。
「な、何をするんだ…!あ、歩けるから離してくれ‼︎」
月城は人形のように端麗に整った貌を真っ直ぐ前に向け、落ち着き払って答える。
「おとなしくなさってください。…あの丘の上までお連れします」
「暁様!馬をお止めください!怪我をされたらどうするのですか⁈」
暁は月城を睨んだ。
「放っておいてくれ!関係ないだろう、僕がどうなろうと」
鞭をくれ、更にアルフレッドを促す。
馬首一つ月城の馬より抜け出した。
…と、その瞬間、汚泥のような窪地の泥濘に脚を取られたアルフレッドが嘶き、前足を高く上げ、暴れ出した。
「危ない!」
暁の華奢な身体が馬上から投げ出されるのと、月城が手綱を放し、暁の身体を空中で受け止めるのがほぼ同時であった。
月城は暁をしっかりと抱き締めると、苔生した地面に転がった。
転がりながらも月城は腕の中の暁をしっかり守り切る。
平地の草叢でようやく二人の身体は止まった。
素早く月城は起き上がり、暁に声をかける。
「暁様!暁様!大丈夫ですか⁈」
秋の日差しの下、白皙の美貌は玻璃のように脆く儚げに見え、月城は息が詰まる。
薄い蒼白い瞼がゆっくりと開かれる。
煌めく黒い瞳は潤んでいて…月城は暁が泣いているのかと思った。
暁はじっと月城を見つめた。
無防備なまでの美しい瞳…。
なぜだか月城は無性に腹が立ち、叫んでいた。
「なぜあのような無茶をなさるのですか⁈…万が一のことがあったら…‼︎」
美しいが悲しげな色を湛えた瞳を逸らして、呟く。
「…死んでも良かったのに…」
「…⁈」
「…死んでも良かったのに…君のせいで死に損なった…」
乾いた笑いを漏らす暁が胸に詰まる。
「…暁様…」
「…もう大丈夫だ。…馬を…アルフレッドを探しに行かなくては…君の馬も…」
起き上がろうとする暁の肩を抱いて止める。
「すぐに動かれてはなりません。…馬は大丈夫です。ここの馬場には慣れておりますから、すぐに戻ってまいります」
「…でも…伯爵の馬に何かあったら君の責任になってしまう…」
月城を気遣い、立ち上がろうとしてふらついた暁を抱きとめる。
「…大丈夫です。ジークフリートは絶対に外へは出ません。…それより…少し休みましょう。
…失礼いたします」
一言断るが早いか、月城は両腕に軽々と暁を抱き上げた。
驚いた暁が、慌ててもがく。
「な、何をするんだ…!あ、歩けるから離してくれ‼︎」
月城は人形のように端麗に整った貌を真っ直ぐ前に向け、落ち着き払って答える。
「おとなしくなさってください。…あの丘の上までお連れします」