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暁の星と月
第7章 愛と哀しみの円舞曲
暁は月城の胸を突っ撥ねようと試みたが、細身に見えて逞しい胸板はびくともしなかった。
諦めて月城の胸に身体を委ねる。
…水仙の薫りだ…。
昔から嗅ぎ慣れていた月城の薫りに、少しずつ気持ちが落ち着いてゆく自分を感じる。
丘の上までは少し距離がある。
しかし月城は表情ひとつ変えずに、暁を抱き上げたまま丘陵の斜面を進む。
伯爵のお下がりではあろうが、上質な乗馬ジャケットに白いシャツ、黒い細身の乗馬ズボン、黒革の長ブーツが良く似合いその姿は執事というよりも、群を抜いて美貌な貴族のそれであった。
眼鏡の奥の瞳は切れ長で涼し気に澄み渡り、彫像のように整った鼻筋、唇と共に思わず見惚れてしまうほどの美しさである。
下から見つめている暁の視線と月城のそれが交わる。
月城がふっと表情を和らげて微笑んだ。
「…ご気分は悪くはないですか?」
「…う、うん…大丈夫…」
思わず俯いてしまった暁に、月城は優しく声をかける。
「もう着きますよ。…丘の上の方が風が吹いて涼しいでしょう」

大きな楡の木の下に着くと、月城は丁寧に暁を下ろした。
下ろしてからも月城は心配そうに暁の様子を見る。
「…ブーツをお脱ぎください。それから襟元も、緩められてください」
甲斐甲斐しく世話を焼く。
月城の美しい指が暁の喉元まで留めてある鈕を外そうとする。
ひんやり冷たい彼の指がうなじに当たり、暁はぞくりと背筋を震わせる。
「…いい。自分で出来る…」
ついぶっきらぼうな言い方になるのにも、月城は少しも気にする様子もなく、跪き暁の黒革の長ブーツを恭しく脱がす。
…梨央さんの世話もこんなに細やかに焼いていたのだろうか…。
…そういえば…月城は梨央さんが好きだったな…。
ぼんやり考えている暁に、
「横になられますか?」
と、穏やかに尋ねる。
暁は首を振る。
「…僕よりも…君は大丈夫か?…僕を庇って落馬して…怪我はないのか?」
月城はひんやりとした美貌に笑みを浮かべる。
「大丈夫です。…落馬の受け身は伯爵様の従者に叩き込まれましたから」
「…そうか。…良かった…」
暁は息を吐く。

月城は暁の輝くように白く美しい素足からさりげなく目を逸らし、尋ねる。
「どうなさったのですか?…いつもの暁様らしくありませんね…」
「…別に…アルフレッドと早駆けしたかっただけだ…」
目を逸らそうとする暁を、月城が真剣な眼差しで見据える。


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