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暁の星と月
第8章 月光小夜曲
風間が、司と共に縣邸に到着したのは、夜の9時をすぎたところだった。
念のため裏口に車をつけ、裏玄関から入った風間は司を抱きかかえながら客間に現れた。
風間は普段着のセーターにジャケット、カシミアの外套という軽装だ。
「…お袋には葉山の別荘に連れて行くと言って家を出た。…少しは時間が稼げるかもしれない」
百合子が椅子から立ち上がり、待ちかねたように走り寄る。
「司!…司!」
「お母様!」
司は風間の腕から飛び出し、百合子に強く抱かれた。
「…司…司…会いたかった…!」
百合子が涙を流し、司に頬を擦り寄せる。
タータンチェックのカシミアのケープを纏い、ふわふわの狐の毛皮の帽子を被った司は大層愛らしい。
司は百合子を見てほっとした様子だったが、決して涙は見せなかった。
母の白い頬を流れる涙をその小さな手で拭うと、無邪気に笑った。
「お母様!これから忍おじちゃまと司とお母様で、がいこくに行くんでしょう?それから三人で暮らすんでしょう?僕、お船に乗るの初めて!早く乗りたい!」
司の背後から風間が窘める。
「…忍くんだ。司」
百合子ははっと息を飲み、苦しげな表情をする。

察した暁がさりげなく司を百合子から受け取り、微笑みかけた。
「司くん、僕と食堂でケーキを食べようか。…ここの料理長のアップルパイは美味しくて、ほっぺたが落ちるくらいなんだよ」
母親に良く似た美しい青年に司は物怖じもせずに、抱かれはしゃぐ。
「アップルパイ!大好き!」
司の大きな瞳が輝く。
暁も思わず笑みを漏らす。
「…いい子だね。さあ、行こう」
風間と百合子を残し、暁は祈るような眼差しで客間の扉を見遣りながら、その場を後にした。




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