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暁の星と月
第8章 月光小夜曲
暁が玄関ホールに着くと、そこには明らかに裏社会の匂いがするような風体と目付きの悪い男達がウロウロとしていた。

現れた暁を見て彼らは一瞬息を飲む。
暁のこの世のものとは思えぬひんやりとした美貌は彼らに無意識の畏怖を与えた。

しかしすぐに形勢を取り戻すと、にやりと笑いながらボスらしき男が近づいてきた。
「…あんたが暁さんかい?…風間のボンのお友達だね?」
「…はい」
男は暁を嫌らしい目付きで舐めるように見る。
「…俺たちは百合子様のご実家…飛鳥井の大奥様から百合子様の身辺警護を頼まれたモンでね。…どうやら風間のボンは司坊ちゃんと百合子様を連れて逃避行されたようなんだが…あんた…どこに隠した?」
暁は眉ひとつ動かさず、静かに答える。
「存じません」
「存じてねえわけねえだろう?…司坊ちゃんの乳母がこの屋敷に入って来るのをウチの若い衆が目撃してんだよ。…なあ、綺麗な坊ちゃんよ…。あんた、この綺麗なお貌に痣なんか作りたかねぇだろう?…痛い目に合う前に、とっとと白状しな」
猫撫で声で言いながら、男は暁の顎を持ち上げる。
近くで暁の美貌を目の当たりにし、眼を輝かせた。
「こりゃあ綺麗な坊ちゃんだ。…しかも色っぽい風情をしているじゃねえか…こりゃあ痛い目じゃなくて別の眼に合わせたほうが、こちらには良さそうだな…」
男達が下卑た笑いを弾けさせる。
暁が冷たく男の手を払いのける。
「触るな、屑野郎」
美しい青年の口から辛辣な言葉が放たれたので、男は眼を見張る。
…が、すぐに暁の腰を引き寄せるとくちづけせんばかりに顔を近づけ、野卑な笑いを漏らした。
「言うじゃねえか、綺麗な坊ちゃん…。
だがな、あんたみたいな綺麗な坊ちゃんにそんな風に罵られると…俺たちは余計に燃えるんだよ」
そう言うと、男は暁の首筋に手を這わせる。
暁の顔色が変わる。
「…!…やめろ…!」
男は暁を羽交い締めにする。
「おとなしくしな、綺麗な坊ちゃん。…素直に百合子様の居場所を吐くんだよ。
…そうすりゃ、あんたの貞操は守られるんだからなあ」
「離せ…‼︎」
暁が必死に抗ったにも関わらず、屈曲な男はいとも容易く暁を抱き込み、再び暁の貌を撫で回そうと手を伸ばした。
「…本当に綺麗な貌をしてやがるぜ…」
男が興奮した声を漏らした時…

玄関の扉が開き、落ち着いた美声が響き渡った。
「…その汚い手を離しなさい」



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