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暁の星と月
第8章 月光小夜曲
暁は振り返る。
礼也はまるで、これから夜会に行くような優雅な姿で佇んでいた。
上質なイタリア製のソフト帽を、優美な所作で脱ぐ。
侵し難い気品と風格と雄々しい美しさを兼ね備えた紳士の出現に、男達は固唾を呑んだ。
「兄さん…!」
暁が叫ぶ。
…14歳のあの日の光景が蘇る。
眩いばかりの陽光を背に、暁をやくざ者達から救い上げてくれた礼也…。
あの日と同じ眼差しで、礼也は暁を見た。
優しく頷くと、暁を羽交い絞めにしている男に冷たい視線を向けた。
「…暁から手を離せ。…私の可愛い弟を汚い手で触るな。穢れる」
「な、なに⁉︎何なんだよ、お前は⁉︎」
気色ばむ男に礼也はふっと笑いながら近づく。
「…私はこの家の当主、縣礼也だ。招かれざる客とは君達のことを言うのだよ」
そして素早く男の手を捩じり上げ、暁を解放すると、自分の胸に抱き込んだ。
「…兄さん!」
礼也は小さな子供を安心させるように笑いかけた。
「…いい子だ。もう大丈夫だよ」
優しく髪を撫でると、暁を背中に庇う。

礼也は穏やかな…だが静かな怒りを感じさせる眼差しを男達に向けた。
「…さて、君達は我が屋敷に土足で踏み込み、挙げ句の果てには私の大事な弟に乱暴しようとした…。
…このままで済むと思っているのか?」
腕を捩じり上げられた男は、肩を抑えながら礼也を恐々と睨む。
「…お、俺達は飛鳥井の奥様に依頼されたんだよ!
も、元はと言えば、あんたの弟が百合子様と風間の倅の駆け落ちを隠し立てするからだろうが!
とっとと素直に喋っちまえばこっちだって手荒な真似はしなかったんだ!」

礼也は目を輝かす。
「…ほう。風間くんは駆け落ちしたのか。…なんとロマンチックなことだろう。お相手は義理の姉上か。…禁断の愛だな。…愛は障害があるほどに燃え上がるものだからな」

男は礼也の暢気な様子に苛立ち、声を張り上げる。
「…お、おい!ふざけるんじゃねえ!…とっとと吐け!吐けったら吐け!」
礼也はふと詰まらぬものを見るように、男を振り返る。
「…飛鳥井夫人は随分と堕ちたものだな。…このようなやくざ者を使ってまで義理の娘を財産目当てで、売りつけたいのか…。
つくづく亡き飛鳥井伯爵にはご同情申し上げるよ。…勿論百合子さんにもね…」

と、言うが早いか礼也は壁に掛けてある銀のフェンシングの剣をしなやかな動作で手にし、男の喉元ぎりぎりに突き立てた。


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