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暁の星と月
第8章 月光小夜曲
礼也はその男らしく知性溢れた美貌に笑みを浮かべ、まるで楽しい話でもするように、男に語りかける。
「…飛鳥井夫人は私の母の友人でね。…全く、類は友を呼ぶとはよく言ったものだよ。彼女の悪業の数々は私がよく承知している。…私が新聞社に売り込めば、彼女は社交界に顔を出せないどころか、警察が動き出すほどの危険な行為を犯していることもね…」
「…ひっ…‼︎」
礼也の剣の切っ先が男の喉元を掠めそうになる。
「…蛇の道は蛇ということだ。…いいか、お前達が手の施しようのない馬鹿ではないというのなら、今直ぐここから出てゆき、飛鳥井夫人に今の話をするのだ。
…私が、これ以上百合子さんと風間くんの行方を探そうとするならば、容赦はしないと言っていたこともだ」
礼也は優雅な足捌きで、剣を突きつけたまま男を壁際まで追い詰める。
「…ひ…い…!…わ…わかった…!…伝える…伝えるから…っ!」
男は情けない声を出し、震えながら両手を挙げた。
固唾を呑んで状況を見守っていた手下の男達もオロオロと声をかける。
「…あ、兄貴…!」
礼也はふっと剣を下げ、興味をなくした冷めた眼差しで言い捨てる。
「早く出て行け。…二度と私の屋敷に足を踏み入れるな」
男たちはバタバタと蜘蛛の子を散らすようにホールから出ていった。
礼也は壁に剣を戻しながら肩を竦める。
「…つまらん。…せっかく久しぶりに実地で闘えると思ったのに…」
暁が大きく溜息をつき、礼也に抱きつく。
「…兄さん…!」
打って変わった蕩けそうな優しい表情で、暁を抱きしめる。
「…怖かっただろう?…もう大丈夫だ」
「…兄さん…」
暁の華奢な身体が小刻みに震えていた。
「…昔を思い出したのか?…可哀想に…。
玉木から話は聞いた。もっと早く私を呼んでくれたら良かったのに…」
礼也の大きな手が愛撫するかのように、暁の髪を撫でる。
「…兄さんに…迷惑を掛けたくなかったんです…」
礼也は腕を緩め、暁の白い花のような美しい貌を愛しげに見つめる。
「風間くんはお前の大切な友人だ。…彼の為なら私は喜んで力になるよ」
「…兄さん…ありがとうございます…」
嬉しそうに微笑む暁の額に額を付ける。
「だが、寂しくなるな。…風間くんがいってしまって」
慰撫するような優しい言葉に微笑みながら首を振る。
「…忍さんが幸せになるなら、いいんです」
礼也は笑った。
「お前はいい子だ」
「…飛鳥井夫人は私の母の友人でね。…全く、類は友を呼ぶとはよく言ったものだよ。彼女の悪業の数々は私がよく承知している。…私が新聞社に売り込めば、彼女は社交界に顔を出せないどころか、警察が動き出すほどの危険な行為を犯していることもね…」
「…ひっ…‼︎」
礼也の剣の切っ先が男の喉元を掠めそうになる。
「…蛇の道は蛇ということだ。…いいか、お前達が手の施しようのない馬鹿ではないというのなら、今直ぐここから出てゆき、飛鳥井夫人に今の話をするのだ。
…私が、これ以上百合子さんと風間くんの行方を探そうとするならば、容赦はしないと言っていたこともだ」
礼也は優雅な足捌きで、剣を突きつけたまま男を壁際まで追い詰める。
「…ひ…い…!…わ…わかった…!…伝える…伝えるから…っ!」
男は情けない声を出し、震えながら両手を挙げた。
固唾を呑んで状況を見守っていた手下の男達もオロオロと声をかける。
「…あ、兄貴…!」
礼也はふっと剣を下げ、興味をなくした冷めた眼差しで言い捨てる。
「早く出て行け。…二度と私の屋敷に足を踏み入れるな」
男たちはバタバタと蜘蛛の子を散らすようにホールから出ていった。
礼也は壁に剣を戻しながら肩を竦める。
「…つまらん。…せっかく久しぶりに実地で闘えると思ったのに…」
暁が大きく溜息をつき、礼也に抱きつく。
「…兄さん…!」
打って変わった蕩けそうな優しい表情で、暁を抱きしめる。
「…怖かっただろう?…もう大丈夫だ」
「…兄さん…」
暁の華奢な身体が小刻みに震えていた。
「…昔を思い出したのか?…可哀想に…。
玉木から話は聞いた。もっと早く私を呼んでくれたら良かったのに…」
礼也の大きな手が愛撫するかのように、暁の髪を撫でる。
「…兄さんに…迷惑を掛けたくなかったんです…」
礼也は腕を緩め、暁の白い花のような美しい貌を愛しげに見つめる。
「風間くんはお前の大切な友人だ。…彼の為なら私は喜んで力になるよ」
「…兄さん…ありがとうございます…」
嬉しそうに微笑む暁の額に額を付ける。
「だが、寂しくなるな。…風間くんがいってしまって」
慰撫するような優しい言葉に微笑みながら首を振る。
「…忍さんが幸せになるなら、いいんです」
礼也は笑った。
「お前はいい子だ」