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暁の星と月
第9章 ここではない何処かへ
暁はその日一睡もせずに怪我人の手当てや手の足りない炊き出しの手伝い、配給をこなし、翌朝を迎えた。
「坊ちゃん!もう休みんしゃい!昨日から坊ちゃんはろくに休憩も取られてなかよ。そんな華奢な身体で…倒れてしまいますけん!」
見兼ねた大番頭や縣商会の従業員たちに心配されても決して休まなかった。
「もうすぐ日赤から医師達が来ます。けれど、それまでは気が抜けませんから」
「…坊ちゃん…」
「…皆さんは休んでください。…こちらにご家族がいる方は、付いていてあげてください…きっと心細い思いをされていることでしょう」
暁が優しく微笑みながらそう従業員に声をかけた時だ。

事務所のドアが荒々しく開かれ、眼光鋭い男達が数名中に入ってきた。
大番頭の玉木が、窘める。
「何や?急に入ってきよってからに…」
男達が口々に叫び始める。
「おい!聞いたぞ!長屋の移転話があったそうやないか!」
「去年の台風で大水が出て危なかったけん、儂等直訴したんじゃ!そしたら移転話ば出たゆう話やないか!
なんでその時、移転してくれなかったと⁈…社長がケチってやらなかったんやないか⁈」
暁は思わず叫んだ。
「違います!…兄は移転するように指示をしたのです。けれどそれを支社長が、機材導入を優先されたから後回しになってしまったのです」
男達は目の前の並外れた美貌の青年に目を移し、侮蔑するように嘲笑った。
「…あんた…社長の弟さんやて?…こんなおなごみたいに綺麗な貌したひよっこに何がわかるったい?」
「そうやそうや!普段は東京にいて、綺麗なお仕事しかしとらんのやろ?…もしそれが事実でも、ちゃんと移転しているかどうか確認するのが社長の役目やないと?…儂等は社長に見捨てられたようなもんじゃ!」
男達は家を流され、家族を失った苛立ちや悲しみを暁にぶつけ始めたのだ。
大番頭の玉木が男達から暁を守る。
「暁様は昨日から必死で負傷者助けようと尽力下さってるとよ!失礼なことを言うな!」
「あんたは所詮、社長側の人間たい!儂等の気持ちはわからん!」
興奮した男達が小競り合いを始めたその時だった。

ドアが開かれ、落ち着いた低い美声が響き渡った。
「…失礼いたします。縣鉱業の顧問弁護士、大紋春馬です。到着が遅れ、誠に申し訳ありません」

暁ははっと目を見張った。
…現れたのは黒いスーツに身を包んだ精悍な姿の大紋であった。


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