この作品は18歳未満閲覧禁止です

  • テキストサイズ
暁の星と月
第9章 ここではない何処かへ
事務所の休憩室には救助された人々が泥だらけのまま寝かされていた。
真冬だというのに、暖房もなく寒さに震えている人ばかりだ。
怪我をしているのに、ろくな手当てもされてはいない。
怪我の痛みに泣き叫ぶ子ども達もいる。
現場は混乱をしていて、細かなことに気づく人がいないのだ。

暁は眉を顰めた。
「医師は?看護師はどうなっているのですか?」
現場監督が首を振る。
「…この町には年老いた医者が1人おるだけです。…その先生は診療所でもっと重症患者にかかりっきりになっておるとです。…ここの患者を診る余裕はなかです」
「…そんな…。ここの人達も怪我を負っています。放っておけば命に関わるかも知れません。早く他の医師の手配を…」
救助された比較的軽傷な炭鉱夫が叫ぶ。
「綺麗な坊ちゃん!こんな田舎町にすぐ来てくれるような医者はおらんとよ!診てもらうには大きな街までいかんといけん」
「…怪我をされている方々を今、動かす訳にはいきません」
暁は大番頭の玉木に指示を出す。
「…北九州の日赤に連絡をしてください。あそこの院長は僕の馬術部の先輩です。怪我人の救助要請と医師の派遣をお願いしてください。僕の名前を出して構いません。急いでください」
「…分かったと!」
玉木は事務所に電話を掛けに走る。
暁は現場監督に続けて指示を出す。
「石炭をありったけ運んでください。部屋を暖めなくては。それからお湯を沸かして、清潔な布をたくさん持ってきてください。患部を清潔にして応急手当てをして、医師を待ちましょう。…体力のない子ども達を先に見てあげてください」
「…了解じゃあ!」
現場監督も部屋を飛び出した。
暁はスーツの上着を脱いで、率先して子ども達の手当てを始めた。
「…痛くないよ。大丈夫だからね」
優しく声をかけられた子どもは素直に頷く。
縣商会の若者たちが、次々に集まり暁に尋ねた。
「坊ちゃん!わしらは何をしたら良かですか?」
普段、物静かで控えめな美しい御曹司が人が変わったかのようにきびきびと采配を奮い、怪我人の手当てをしているのを見て、いてもたってもいられなくなったのだ。
「…では、手が空いているものは食堂に行って炊き出しをしてくれ。温かい食事を早く皆んなに配給してあげたいんだ。備蓄してある食料はなんでも使っていい」
若者たちは力強く頷くとそれぞれの役割を決め、持ち場へと走り出したのだ。

/479ページ
無料で読める大人のケータイ官能小説とは?
無料で読める大人のケータイ官能小説は、ケータイやスマホ・パソコンから無料で気軽に読むことができるネット小説サイトです。
自分で書いた官能小説や体験談を簡単に公開、連載することができます。しおり機能やメッセージ機能など便利な機能も充実!
お気に入りの作品や作者を探して楽しんだり、自分が小説を公開してたくさんの人に読んでもらおう!

ケータイからアクセスしたい人は下のQRコードをスキャンしてね!!

スマートフォン対応!QRコード


公式Twitterあります

当サイトの公式Twitterもあります!
フォローよろしくお願いします。
>コチラから



TOPTOPへ