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暁の星と月
第10章 聖夜の恋人
月城が静かに辞退する。
「…いいえ、結構です。どうぞお構いなく…。
…縣様、実は一つ早急にお伝えしなくてはならないことがございます」
「…どうした?」
「…ただ今、我が北白川邸にて、光様のお見合いが行われております」
唐突に、礼也が手にしていたクリスマスリースを取り落とす。
大理石の床に跳ね返り、派手な音がする。
暁ははっと礼也を見上げた。
礼也の雄々しく整った貌が蒼ざめ、眉根が苦しげに寄せられている。

…光さん?…光さんはパリではなかったのか?
光さんがお見合い…。
けれどなぜ、兄さんが動揺しているのか…。
…何より、なぜ月城がそれを報せに来たのか?
暁の頭の中には疑問が次から次へと湧き出し、混乱し始める。

「…そうか…。今日が…光さんのお見合いか…」
確かめるような礼也の声…。
月城は改めて、花台に置かれたクリスマスローズに視線を移す。
「…縣様、クリスマスローズの花言葉をご存知ですか?」
礼也がゆっくりと月城を見る。
「…クリスマスローズの花言葉は、追憶です」
「…追憶…」
月城の切れ長の瞳が礼也をひたと見つめる。
「失礼を承知で申し上げます。…縣様は光様とのことを美しい追憶にしてしまってよろしいのですか?…ただ縣様の記憶にのみ残る光様でよろしいのですか?…生身の光様と進まれる道を違えてしまわれてもよろしいのですか?」
淡々と、しかし畳み掛けるような口調で尋ねる月城に、暁は圧倒される。
…どうして…兄さんと光さんが…?
…これではまるで、兄さんと光さんは何かあるみたいだ…。
礼也は苦しげに、首を振る。
「…月城…しかし、光さんは…私のことを何とも思ってはおられないだろう…」
「…お二人はよく似ていらっしゃいます。…お互いがお相手のお気持ちを慮りすぎて、その場所から一歩も動けないでいらっしゃる。…縣様、貴方様はお優しいお方です。
しかしそのお優しさゆえに、お相手の方のお気持ちを尊重しすぎるのです。
…時にはお心の赴くままに行動されてもよろしいのではないでしょうか?」
「…月城…!」
月城は礼也の傍らの暁を気にしながらも、真摯に伝える。
「…光様は昨日、縣様がお帰りになった後、泣いておられました。…あの気丈な光様が…本当に哀しそうに…」
「…光さん…!」
礼也の声はまるでそこに愛しい人がいて、愛を語るような激しい口調であった。
暁の胸が締め付けられる。

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