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暁の星と月
第3章 暁の天の河
「…もうすぐ夏休みだね。暁くんは今年の夏はどうやって過ごすの?」
暁のぎこちない様子をさり気なく察知し、大紋は違和感なく話題を変えた。
暁はほっとしながら、微笑んで大紋を見る。
「部活の合宿でずっと軽井沢に缶詰めです。…障害馬術を始めたばかりだから…必死に練習しないと。
…アルフレッドは優秀なんですけれど、僕が未熟すぎて…。なかなか上手くいかないことが多くて。アルフレッドにも兄さんにも申し訳ないです」
本音を漏らす暁を、大紋は優しく見つめる。
「暁くんは真面目だな。馬術は人馬一体となって初めて成立するスポーツだからね。人が緊張したり過度にストレスを感じたりすると、馬にそれが伝わってしまう。だからもっとリラックスして、アルフレッドを信じて乗ってごらん。…そう。君に必要なことは馬術を楽しむ気持ちだよ」
大らかで温かいアドバイスに暁の心は白湯を飲んだ後のように暖まる。
「…ありがとうございます。…大紋さんとお話ししていると、なんだか安心します」
暁の花が咲いたかのような可憐な微笑みを受けて、大紋は思わず、照れたように目を逸らす。
そして、砕けた口調で話し出す。
「…いや、ただの先輩のお節介さ。僕は君みたいに優秀ではなかったから、適当にお気楽に乗っていたからね」
「でも、兄さんが…春馬は全然練習しないのに、ここ一番には強かったって。二日酔いのまま乗って入賞したこともあるって…」
大紋は頭を掻いた。
「若気の至りさ。前日、大学の寮で猛者にさんざん飲まされてね。…て…何だか恰好悪いな…」
暁は可笑しそうに声を出して笑う。
「恰好悪くなんかないです。大紋さんはいつも恰好良くて優しくて僕の憧れです」
大紋と暁の目が合う。
一瞬、二人の眼差しの奥に…あの日の光景が蘇る。
そうして、目を逸らしたのは大紋が先だった。
「ありがとう。…デザートだ」
黒服のウェイターが恭しくデザートを運んで来た。
「…タルトタタンでございます」
タルトタタンが大好きな暁は目を輝かせる。
「…そして、お帰りになりましたお兄様の分ですが…ザッハトルテでございます。どうぞごゆっくりお召し上がり下さいませ」
ザッハトルテも大好きな暁は思わず微笑む。
「…兄さんたら…僕の好きなケーキを頼んでくれたんだ…」
大紋は穏やかに微笑む。
「さすが、礼也だな。…さあ、食べなさい」
暁のぎこちない様子をさり気なく察知し、大紋は違和感なく話題を変えた。
暁はほっとしながら、微笑んで大紋を見る。
「部活の合宿でずっと軽井沢に缶詰めです。…障害馬術を始めたばかりだから…必死に練習しないと。
…アルフレッドは優秀なんですけれど、僕が未熟すぎて…。なかなか上手くいかないことが多くて。アルフレッドにも兄さんにも申し訳ないです」
本音を漏らす暁を、大紋は優しく見つめる。
「暁くんは真面目だな。馬術は人馬一体となって初めて成立するスポーツだからね。人が緊張したり過度にストレスを感じたりすると、馬にそれが伝わってしまう。だからもっとリラックスして、アルフレッドを信じて乗ってごらん。…そう。君に必要なことは馬術を楽しむ気持ちだよ」
大らかで温かいアドバイスに暁の心は白湯を飲んだ後のように暖まる。
「…ありがとうございます。…大紋さんとお話ししていると、なんだか安心します」
暁の花が咲いたかのような可憐な微笑みを受けて、大紋は思わず、照れたように目を逸らす。
そして、砕けた口調で話し出す。
「…いや、ただの先輩のお節介さ。僕は君みたいに優秀ではなかったから、適当にお気楽に乗っていたからね」
「でも、兄さんが…春馬は全然練習しないのに、ここ一番には強かったって。二日酔いのまま乗って入賞したこともあるって…」
大紋は頭を掻いた。
「若気の至りさ。前日、大学の寮で猛者にさんざん飲まされてね。…て…何だか恰好悪いな…」
暁は可笑しそうに声を出して笑う。
「恰好悪くなんかないです。大紋さんはいつも恰好良くて優しくて僕の憧れです」
大紋と暁の目が合う。
一瞬、二人の眼差しの奥に…あの日の光景が蘇る。
そうして、目を逸らしたのは大紋が先だった。
「ありがとう。…デザートだ」
黒服のウェイターが恭しくデザートを運んで来た。
「…タルトタタンでございます」
タルトタタンが大好きな暁は目を輝かせる。
「…そして、お帰りになりましたお兄様の分ですが…ザッハトルテでございます。どうぞごゆっくりお召し上がり下さいませ」
ザッハトルテも大好きな暁は思わず微笑む。
「…兄さんたら…僕の好きなケーキを頼んでくれたんだ…」
大紋は穏やかに微笑む。
「さすが、礼也だな。…さあ、食べなさい」