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暁の星と月
第3章 暁の天の河
「…合宿はいつまで?星南の夏休みは始まるのが早いから、長いだろう?そのまま縣家の軽井沢の別荘でゆっくり過ごせるんじゃないか?」
大紋はシャンパンのシャーベットを口に運びながら尋ねる。
「…はい。お盆休み以降は何もないんですけど…」
暁はフォークを持つ手を一瞬、止めて言い淀む。
そして、少し逡巡を感じさせる小さな声で呟くように言った。
「…今年はそのまま、東京に帰宅しようかな…て考えています」
暁の声のトーンの違和感に気付いた大紋は眉を寄せる。
「なぜ?…毎年、その頃は礼也も必ず軽井沢の別荘で過ごすだろう?合流出来るじゃないか」
「…はい。…でも…今年は別荘に梨央さんをお招きするそうなので…。僕がいたら、お邪魔かな…て」
寂しげに微笑む暁に、大紋はすぐに暁の心中を察し、
「…そんなことはないだろう。梨央さんと君は年も近い。良い話し相手になるはずだ」
と、勇気付けるように答える。
「もちろん、兄さんは僕も軽井沢の別荘で過ごすものと思っていますし…まだ伝えてはいないんですけれど…」
暁の儚げな美貌がテーブルのランプの灯りを受け、この世ならぬ幽玄な雰囲気を醸し出し、大紋は暫し見惚れた。
「…兄さんも多忙だから、普段なかなか梨央さんにお会いできないんです。
せっかくの機会だから梨央さんと二人きりでゆっくり過ごしてもらいたいな…て」
兄の北白川令嬢への気持ちを慮る暁の健気な心遣いに、大紋の胸は切なく痛む。
「…暁くん、礼也はそんなことを望んではいないと思うよ。あいつは君と梨央さんが仲良く過ごしてほしいと思っているはずだ」
大紋の優しい励ましに、暁は微笑む。
「そうだと思います。…兄さんはいつだって、僕のことを考えてくれている…」
…優しい優しい兄…
だが、兄には恋い焦がれる美しい白薔薇の姫君がいるのだ…。
「…梨央さんにお逢いしたことは?」
「はい。数回…北白川邸に兄さんとお邪魔しました。…とても大人しやかでいらしたけれど…まるでお伽話のお姫様のように優雅でお美しく…お優しい方でした…」
…北白川邸で、梨央と対面した時のことを思い出す。
梨央は緊張する暁に、芳しく美しい白薔薇のブーケを差し出し
「朝摘んだばかりの薔薇ですの。…受け取っていただけたら嬉しいですわ」
と、類いまれなる美貌に清らかな笑みを浮かべた。
…天使は本当にいるんだな…
暁は梨央に見惚れながら思った。
大紋はシャンパンのシャーベットを口に運びながら尋ねる。
「…はい。お盆休み以降は何もないんですけど…」
暁はフォークを持つ手を一瞬、止めて言い淀む。
そして、少し逡巡を感じさせる小さな声で呟くように言った。
「…今年はそのまま、東京に帰宅しようかな…て考えています」
暁の声のトーンの違和感に気付いた大紋は眉を寄せる。
「なぜ?…毎年、その頃は礼也も必ず軽井沢の別荘で過ごすだろう?合流出来るじゃないか」
「…はい。…でも…今年は別荘に梨央さんをお招きするそうなので…。僕がいたら、お邪魔かな…て」
寂しげに微笑む暁に、大紋はすぐに暁の心中を察し、
「…そんなことはないだろう。梨央さんと君は年も近い。良い話し相手になるはずだ」
と、勇気付けるように答える。
「もちろん、兄さんは僕も軽井沢の別荘で過ごすものと思っていますし…まだ伝えてはいないんですけれど…」
暁の儚げな美貌がテーブルのランプの灯りを受け、この世ならぬ幽玄な雰囲気を醸し出し、大紋は暫し見惚れた。
「…兄さんも多忙だから、普段なかなか梨央さんにお会いできないんです。
せっかくの機会だから梨央さんと二人きりでゆっくり過ごしてもらいたいな…て」
兄の北白川令嬢への気持ちを慮る暁の健気な心遣いに、大紋の胸は切なく痛む。
「…暁くん、礼也はそんなことを望んではいないと思うよ。あいつは君と梨央さんが仲良く過ごしてほしいと思っているはずだ」
大紋の優しい励ましに、暁は微笑む。
「そうだと思います。…兄さんはいつだって、僕のことを考えてくれている…」
…優しい優しい兄…
だが、兄には恋い焦がれる美しい白薔薇の姫君がいるのだ…。
「…梨央さんにお逢いしたことは?」
「はい。数回…北白川邸に兄さんとお邪魔しました。…とても大人しやかでいらしたけれど…まるでお伽話のお姫様のように優雅でお美しく…お優しい方でした…」
…北白川邸で、梨央と対面した時のことを思い出す。
梨央は緊張する暁に、芳しく美しい白薔薇のブーケを差し出し
「朝摘んだばかりの薔薇ですの。…受け取っていただけたら嬉しいですわ」
と、類いまれなる美貌に清らかな笑みを浮かべた。
…天使は本当にいるんだな…
暁は梨央に見惚れながら思った。