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暁の星と月
第3章 暁の天の河
不意に風間が陽気に笑い出す。
「…何が可笑しい?」
警戒したまま尋ねる。
風間は日本人離れした美貌に屈託のない笑みを浮かべたまま答える。
「ご心配なく。貴方が気になさっているような事は杞憂ですよ」
「…と言うと…?」
「僕も縣が好きだからですよ。先輩」
大紋は眼を見張る。
風間はまるでさもない世間話でもするように、軽々と告白する。
「…縣のことは、彼が入部してきた時から気になっていました。凄く綺麗な子だなあ…て。…でも、彼には貴方や彼を眼の中に入れても痛くないくらいに可愛がっている兄さんがいたから…中々手を出せなかった。…縣も兎に角、潔癖でガードが固かったから…」
そして、苦笑いしながら挑戦的に大紋を見上げた。
「…こんなことなら、とっとと奪ってしまえば良かった」
冗談とも本気とも付かぬ彼の言葉に大紋はやや声を荒げる。
「君…!」
光の加減では鳶色にも見える瞳を細めて笑う。
「だから僕は敵ではないと言いたいだけです。…貴方と縣との関係を親父にタレ込んだり、世間にバラしたりしない。…そんなことをしたら自分で自分の首を絞めるようなものですからね」
大紋は大人らしく慎重に答える。
「…初対面に近い君を信用すると思うのか?」
風間は声を放って笑い出す。
「流石は敏腕弁護士さんだ。警戒心が半端ないですね」
そして馴れ馴れしい仕草で大紋の肩に手をかける。
「…信用してください。大紋先輩。縣を愛する者同士の仲じゃないですか。…僕の家は貴方みたいに由緒正しい法曹界の家柄じゃないから、考え方もリベラルだし適当なんです」
…親父も今じゃホテル王だなんだ祭り上げられているけれど、所詮海千山千の成り上がりだしね、と肩を竦めた。
…その代わり…と風間はきらりと光る眼で続けた。
「…貴方が隙を見せたら、遠慮なく縣は頂きます。
躊躇はしません。同じ学院にいる分、僕の方が部はいいですしね」
大紋は改めて、風間を眺める。
すらりとした日本人離れした細身のスタイル、明るい色の長めの髪、目鼻立ちは怜悧に整っているが、やや淫蕩な雰囲気が加味されている。
なにより大紋が危惧したのは、彼から発散される若いながらも濃く官能的な牡の匂いだ。
…嫌な相手だ…。
大紋は眉を顰めつつ、歳下の後輩の挑発には乗らずに静かに答える。
「…肝に銘じておこう…」
「…何が可笑しい?」
警戒したまま尋ねる。
風間は日本人離れした美貌に屈託のない笑みを浮かべたまま答える。
「ご心配なく。貴方が気になさっているような事は杞憂ですよ」
「…と言うと…?」
「僕も縣が好きだからですよ。先輩」
大紋は眼を見張る。
風間はまるでさもない世間話でもするように、軽々と告白する。
「…縣のことは、彼が入部してきた時から気になっていました。凄く綺麗な子だなあ…て。…でも、彼には貴方や彼を眼の中に入れても痛くないくらいに可愛がっている兄さんがいたから…中々手を出せなかった。…縣も兎に角、潔癖でガードが固かったから…」
そして、苦笑いしながら挑戦的に大紋を見上げた。
「…こんなことなら、とっとと奪ってしまえば良かった」
冗談とも本気とも付かぬ彼の言葉に大紋はやや声を荒げる。
「君…!」
光の加減では鳶色にも見える瞳を細めて笑う。
「だから僕は敵ではないと言いたいだけです。…貴方と縣との関係を親父にタレ込んだり、世間にバラしたりしない。…そんなことをしたら自分で自分の首を絞めるようなものですからね」
大紋は大人らしく慎重に答える。
「…初対面に近い君を信用すると思うのか?」
風間は声を放って笑い出す。
「流石は敏腕弁護士さんだ。警戒心が半端ないですね」
そして馴れ馴れしい仕草で大紋の肩に手をかける。
「…信用してください。大紋先輩。縣を愛する者同士の仲じゃないですか。…僕の家は貴方みたいに由緒正しい法曹界の家柄じゃないから、考え方もリベラルだし適当なんです」
…親父も今じゃホテル王だなんだ祭り上げられているけれど、所詮海千山千の成り上がりだしね、と肩を竦めた。
…その代わり…と風間はきらりと光る眼で続けた。
「…貴方が隙を見せたら、遠慮なく縣は頂きます。
躊躇はしません。同じ学院にいる分、僕の方が部はいいですしね」
大紋は改めて、風間を眺める。
すらりとした日本人離れした細身のスタイル、明るい色の長めの髪、目鼻立ちは怜悧に整っているが、やや淫蕩な雰囲気が加味されている。
なにより大紋が危惧したのは、彼から発散される若いながらも濃く官能的な牡の匂いだ。
…嫌な相手だ…。
大紋は眉を顰めつつ、歳下の後輩の挑発には乗らずに静かに答える。
「…肝に銘じておこう…」