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暁の星と月
第3章 暁の天の河
外の馬場に、馬装を終えた風間の灰色の馬が、若い馬丁に手綱を引かれ現れたのが見えた。
風間は馬丁に手を挙げて合図する。
そして革の手袋をつけながら言った。
「…縣に、僕の別荘に遊びに来るように伝えてください。ずっと誘っているのに、ちっとも来てくれやしない」
大紋は憮然としたまま腕を組む。
「…伝える訳ないだろう」
風間は魅惑的な瞳を見張り、可笑しそうに声を上げて笑う。
「これは…嫉妬深い恋人だ。…縣も大変だな…」
…可哀想に…と呟く風間に、
「僕の別荘に、君が来てくれるのは歓迎だよ」
と温度のない声で答える。
風間はくすくす笑いながら、大紋を見る。
「…目の届くところなら良いんですね。…やっぱり貴方は紳士だな。…僕なら恋人にこんな危険な奴は、絶対に近寄らせない。…近寄ろうものなら蹴り出しますけどね」
と嘯くと、慇懃無礼なまでに丁重にお辞儀をした。

「では、ご機嫌よう。ハンサムな弁護士さん。…精々縣を可愛がってあげてください。…僕のことで虐めないでくださいね。…縣は何も知らないのだから、可哀想だ。」
目上を目上と思っていないような態度に腹を立てながらも、自分を抑える。
「…君に言われるまでもないことだ」
端正な顔にこの上ない仏頂面の表情を浮かべる大紋に、風間は流し目で微笑を送りながら、愉快そうに馬房を後にした。

大紋は馬房の中から、風間が颯爽と愛馬に跨り、馬場を疾走する様を見ながら忌々しそうに溜息を吐いた。
「…本当に…食えない奴だ…!」

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