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嘘つきな天使
第2章 嘘つきの始まり
「マリア様、今日はマリア様の大好きな苺のタルトにいたしましょうね。」
フンワリとした優しい笑顔で、摘みたての野苺を見せてくれたのは、召使いのアンだった。
「楽しみだわ…でも、お父様は今夜も仕事で帰られないのね。」
「そんな、まだ分かりませんわ、お仕事が早く片付くかもしれません。」
「アンは、優しい嘘を付くのね…でももっと上手に付いてくれなきゃ!アンが苺のタルトを焼いてくれる時は、決まって何か悲しいことが起きる時よ。」
その日は、私の10歳の誕生日だった。
私は上流階級の生まれで、父は地元では名の知れた大地主だった。
だから、何不自由無く暮らし蝶よ花よと育てられた一人娘の私は、世間知らずなお嬢様だったの。
父の会社が危ないなんて、気づきもしなかったわ。
そして、手広くやりすぎた父の会社が失敗して、あっという間の転落だった。
借金だけが残って、何も無くなちゃった。
私の誕生日を家族でお祝いする事は、永遠に出来なくなったの。
だけど、神様はちゃんと見ていらっしゃるのね。
一度だけ、お父様に連れられて舞踏会へ出掛けたことがあったの。
その時に、私を気に入った方がいたみたいで、今の私達の有り様を見て、望むだけの報酬を出す代わりに娘をよこせと打診してきたの。
要するに身売り。
もう、その方法しか生き残る道は無かったわ。
フンワリとした優しい笑顔で、摘みたての野苺を見せてくれたのは、召使いのアンだった。
「楽しみだわ…でも、お父様は今夜も仕事で帰られないのね。」
「そんな、まだ分かりませんわ、お仕事が早く片付くかもしれません。」
「アンは、優しい嘘を付くのね…でももっと上手に付いてくれなきゃ!アンが苺のタルトを焼いてくれる時は、決まって何か悲しいことが起きる時よ。」
その日は、私の10歳の誕生日だった。
私は上流階級の生まれで、父は地元では名の知れた大地主だった。
だから、何不自由無く暮らし蝶よ花よと育てられた一人娘の私は、世間知らずなお嬢様だったの。
父の会社が危ないなんて、気づきもしなかったわ。
そして、手広くやりすぎた父の会社が失敗して、あっという間の転落だった。
借金だけが残って、何も無くなちゃった。
私の誕生日を家族でお祝いする事は、永遠に出来なくなったの。
だけど、神様はちゃんと見ていらっしゃるのね。
一度だけ、お父様に連れられて舞踏会へ出掛けたことがあったの。
その時に、私を気に入った方がいたみたいで、今の私達の有り様を見て、望むだけの報酬を出す代わりに娘をよこせと打診してきたの。
要するに身売り。
もう、その方法しか生き残る道は無かったわ。