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第29章 歓喜の一夜

「櫻澤……さん……？」
「躊躇いがあるんだよ。ウードゥの時を覚えているか？　何をしても役に立つ事は無かった」
「でも今は櫻澤さんだよ」
「こればかりは、俺自身も分からん。記憶が戻ったから、躰も戻ったのか……どうなんだろうな」
「……じゃあ、私で試して？」
「……美波……」

目の前で驚いた顔をしてる。そして少し考えた後、びしょ濡れの服を脱ぎ出したの。

「櫻澤さん？」
「美波だったら、試してみるのも悪くない。本音を言えば、目茶苦茶になるまで抱き犯したいんだよ」
「だったら抱いて。櫻澤さん……うんん……霧斗……」
「……っ！」

霧斗と呼んだ瞬間に、私達の唇が重なる。もっとと、湯船から立ち上がり、霧斗にしがみつく私。それを上手く受け止めてくれて、霧斗の舌が私の中に忍び込んで来る。

「ん……んっ……霧斗ぉ……」
「美波にそう呼ばれるのはゾクッとするな。もっと俺の名を呼べ美波、もっと俺の名を……」
「……霧斗……霧斗……。
もう触れられないと思っていたのに……霧斗……」
「俺もだ。あの時、美波に触れられたのが最後だと思っていた。まさかウードゥとして美波に触れ、俺としてまた美波に触れられるとは……」
「うん、うん……霧斗」

激しく混ざるように、離れたくないというように、隙間なく絡まる舌と舌。
少し強引に私の口内を蹂躙する舌が懐かしい、霧斗の舌の動きが懐かしい。
舌も唾液も息さえも奪うような霧斗のキス、私の全てを煽るようなキス。私もそれに応える……だってこんなにも霧斗を欲しているんだもの。