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契約的束縛・誘惑なる秘密
第29章 歓喜の一夜

元の私のままで、それは霧斗の願いでもあるけれど、私の願いでもあるの。あの頃の私で霧斗に抱いて欲しいから。
霧斗は黒髪に変わった私の髪を触れ遊び、毛先にキスしてくれる。その優しいやり方に、私の方が目を細めて微笑んでしまう。

「俺から見れば、どちらも綺麗だと思うぞ? ただ俺の気持ちが、こっちの美波を求めた」
「霧斗には見せた事がなかったよね。本当はあの頃から色彩は変わっていたの。仁科さんが必死に抑えてくれていた、出来る限り普通で居られるように、みんなの中で浮かない様にって」

まだ不安定だった頃の私は、仁科さんのサポートがなければ危なかったと思う。ずっと私を見て、均衡を保ってくれていたのは仁科さん。自分がそうしてしまったからと、絶えず私のバランスを見守っていてくれていた。

「拘っていたからな仁科は、自分も人で居たいと。
俺はあまり思っていなかったんだが」
「今の仁科さんも思っていないよ。かなり吹っ切れたみたい」
「ほおー。そういう所は石頭だと思っていたが、少しは柔軟になったか彼奴」
「……ぷっ。だって本郷さんと宮野さんにウケが良いんだもの。今は宮野さんが仁科さんを使って遊んでいるよ、仁科さんも宮野さんだけには容赦ないし、良いコンビだと思う」
「なるほど、吹っ切れた理由はそれか。宮野だったらやりそうだ」
「宮野さんだもの」

1つのベッドでこんな事を話している私達。霧斗が欲しいとは思うけど、それ以上に空いてしまった霧斗との時間を埋めてあげたいとも思ってしまう。
後々に本郷さん達と会っても、違和感が無いように……。

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