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契約的束縛・誘惑なる秘密
第30章 香港―明かされる秘密と選択

バスルームから出たら、櫻澤さんが黒服を手に取っている。着るか着ないか迷っている、そんな風にも見えてしまうのは私だけ?

「お、おはよう櫻澤さん」
「あぁ、おはよう美波。これがあるって事は、着れって事だよな」
「……多分」
「考えても仕方がない、戻る為には着るしかないだろう」
「良いのそれで?」
「問題はないな。俺も軽くシャワーを使ってから着替える」

黒服一式を持ち、バスルームへ行ってしまった櫻澤さん。私は少し悩んだけれど、昨日の乱れが残るベッドに腰掛け待つ事にした。

10分くらいかな待ったのは、出て来た櫻澤さんは……。

「……懐かしい……」
「こんな感じで髪を上げていた筈だが、合っているか? ついでに黒服は変わったんだな」

少し上げた髪、ワイシャツは黒に変わったけど、Cross selsの黒服……あの頃の櫻澤さんそのまま。

「合ってるよ。黒服は今時に合わせて変更になったって聞いてる」
「今時なぁ……。そんな事など気にしないと思っていた」
「それを私に言われても……。変更は中央采配だもの」
「それもそうだ。……で、来ているのか?」
「うん、気配はあるよ」
「縛られ放しのレンも気になる。……行くか」
「……はい……」

扉を開ければ直ぐリビング、そこで寛ぐように座っている仁科さんと、小まめに動いているルークの姿。早くから来ていたの?

「……仁科か……」
「えぇ、漸く戻りましたね……主宰?」
「どうせお前が一枚噛んでいるんだろう?」
「まぁ……。私も昨晩まで忘れていましたがね」

仁科さんが忘れていたって、どういう事なの??

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