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契約的束縛・誘惑なる秘密
第30章 香港―明かされる秘密と選択

「今のイン・ウードゥが、此方に危害を加えるとは思いません。逆にサザンクロス様を守る為に動く、これは予想ではなく確信です」
「ルークにしては珍しい判断ですね? 確信と言い切る保証はなんです?」
「それは……」

ほんの少しだけルークの目が泳ぐのを、見逃す私でもありません。何かを隠している、それは前々から知っている事、ルークの隠し事はイン・ウードゥ絡み、そう考えて正解でしょう。……何故という理由は分かりませんが。

「……丁度いい機会です。ルーク、サザンクロスに一言を言ってから、あまりにも不自然ですね。私にまで何を隠しているんですか?」
「……それを命じたのは……コンラート様の方です」
「私……? ルークにそんな命を出した記憶はありませんよ」

私がルークに命じた?
この数年を思い返してみても、ルークに命を出したのは一度きり……そう、東条海里抹殺の時だけ。あれ以外に明確な命をルークに下した事はありません。
ですがルークは私の命と言いました、そこにどんなやり取りがあったのか……記憶力は人並み以上にいい筈なんですが、私には全く分からない。

「イン・ウードゥの記憶が戻る事を前提に、コンラート様は自分に命じました。
キーは……『誓約の名の元に、櫻澤霧斗への記憶の解放を……』。後はコンラート様にお任せ致します」
「…………!?」

『櫻澤霧斗への記憶の解放を……』

ルークの言葉で甦る私の記憶。そう私は……ルークに命じました。どちらに転ぶか分からない主宰、そして美波に悟られないように、私自ら記憶を封じてしまった。

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