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サイレントエモーショナルサマー
第37章 Passione
藤くんは体調を崩している訳ではなかったらしい。心配だから連絡をくれと送ったメッセージに気分転換に久しぶりに学生時代の仲間とストリートバスケに繰り出していると返信があった。
ご丁寧に写真付きで、その中には過去に身体を重ねていた恭平くんの姿があり、ちょっと複雑な気持ちになった。
戒めか、とも思う。適当にその場その場で生きてきたツケはこうして事あるごとにふわふわと私の周りを漂って、私を責めるのだろう。
それがなんだ。積み重ねてきた過去の上で私は生きている。それは変えようのない事実だ。だが、未来は選べる。私は『彼』と生きる未来を選ぶのだ。
◇◆
諸々の思いを抱えて迎えた月曜の朝は過剰なまでに爽やかな朝だった。太陽よ、手加減してくれ。それだけ照らされれば会社に着く前に体力がなくなってしまう。吹き出す汗を拭いながらフロアに入れば、身体を冷やすエアコンの風を心地よく感じた。
デスクにつき始業に向けて準備をしていると浩志よりも先に藤くんが姿を見せた。少しだけでも話がしたい。立ち上がって近寄ろうとすると藤くんは小さく手招きをして、来たばかりだと言うのにさっさとフロアから出ていく。
後姿を追えば、彼は給湯室へと入って行った。なんだか嫌な予感がする。おずおずと覗き込むと、ぐいと腕を引かれ、抱き締められる。じたばたともがくと抱擁をゆるめてキスの嵐。朝から過激すぎる。途端に疼き出す下腹部が憎らしい。
「ちょっと…藤くん、か、過激だね」
「好きです」
「え、うん…えっと、ありがとう。あのね、今夜ちょっと話出来ないかな」
「今日は無理です」
「じゃ、じゃあ、明日は?」
「明日も無理です」
「………明後日は?」
「明後日も無理です」
なんだこいつ。ふざけないで、と頬を抓るとちゅっとキスされる。意味が分からない。