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メタモルフォーゼ
第1章 羞恥の作品
 芸術家はアメリカ人とのハーフで永瀬マリナといった。
 一目見たら忘れられない美形で、その容姿は利美の目にも焼き付いていた。
 それにしても……
 このアトリエの異貌は……
「これがゲージュツなんだから、聞いて呆れるわ」
 と美咲のツレ、江崎キラは言った。
 利美もその手の本を読みあさったことがあったが、現物を見るのは初めてだった。
「これ、『鉄の処女』だったよね」
 イラストや写真では見たことのある、鉄で出来た人形のような拷問具だった。
 人形は縦に二つに割れ、中に人間を入れ、閉じると、内側に無数に生えた釘が全身を貫くという恐ろしい拷問具だ。
「でも、良く出来てるよね。ここの血の跡なんか、本物みたい」
 え?
 と、利美は思った。
「これ、本物じゃないの?」
「違いますよ」と美咲は笑った。「全部複製です。複製というか、マリナのでっち上げというか、妄想というか、作品ですよ」
「これ、全部?」
「全部」
 ハリツケや木馬や壁を飾る貞操帯や、怪しげな人工ペニスや巨大な浣腸器も……
「全部、ゲージュツ家の妄想ですよ。で、美咲はどれに架けられて展示されそうになったの?」
「これこれ」と美咲は産婦人科の例の検診台のようなオブジェを指した。
 普通の検診台の脚の間に鏡が取り付けてある。
「この鏡は拡大鏡で、あそこが顔の大きさくらいに大写しになるのよ。いくら自分のものだからって、正直、イヤになるよ」
「やってみてよ。座ってみて」
「イヤよ。私だけ何て。そうだ、じゃんけんで決めない? 負けた人がパンティ脱いでここに座るの」
「いいかも。それで、その子が今日のオモチャになるのよ」
 勝手に決めないで! という言葉を利美は生唾と共に飲み込んだ。
 ジャンケンポン!
 美咲とキラはチョキ、利美はパーだった。
「さ、ママ、脱いで、ここに座って」
 利美の頭の中は真っ白になった。
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