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飼っていたペットに飼われています。
第5章 喪失(サキ目線)
 そこから異変を感じるのは早かった。

 熱帯魚はあっという間に全滅し、新たに入れてもすぐに消えていく。次はリビングで飼っていたハムスターが消え、続いて近所の外で飼われている犬が次々いなくなるという話が続いたのだ。
 それと比例して両手に載せられるサイズだったスイが急成長していき、買い替えた水槽にも収まらなくなってサキの部屋で放し飼いするほどになる様は誰の目から見ても奇異であった。

「サキちゃん、スイくんちょっと大きくなりすぎたし動物園に引き取ってもらったらどうかしら?」
「私の知り合いでワニを研究している大学教授がスイくんに興味があるみたいだから、1度預けてみてはどうだろう?」
 そんな言葉を毎日掛けられるようになるのも当然で、やんわり断り続けるのも苦しくなってきた。
 異常なスピードで大きくなるスイが、自分が毎日与えている野菜以外のモノを食べていると考えればすべて合点がいく。
 お世話になっている叔母家族をこれ以上困惑させたくないが、自分の家族であるスイを手放したくない気持ちも強くてサキは悩み疲れていた。

 眠りも浅くなり、その日も重苦しさを感じて目を開けると胸の上にスイがいた。
「スイ…?」
 侑斗との一件以来、スイから自分に寄ってきたのはこれが初めてだった。
 背中を撫でながら、歯はこんなに鋭かったかな、鱗はこんなに硬かったかな、などと思いながら見つめていると、青く二股に分かれた舌が顔に伸びてくる。
 チロチロと頬の辺りを舐められたあと、口を開けて首元に近づいてきた刹那、自分が震えていることに気がついた。
 ーー私、スイが怖いと思ってる。
 スイは鼻先で首をツッと撫でたあとベッドの下に降りて消えた。

 そして、翌朝目覚めたときには家中のどこにもいなくなっていた。
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