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コーストライン
第6章 ga ra su da ma

朝、学校がある春菜に送ってもらって圭吾と和希は、吉田家に、いた。
「居るか」
「居るだろ、叶和さんの靴あるから」
「見ろよ」
「引っこ抜いてるな」
家に入るとシーンと静まり返っていたが、叶和の靴がシッカリ揃えて置いてある。
電話を見ると電話線が抜かれて台からブラリと垂れ下がっている。
「コーヒー飲むか」
「ああ、その間に姉貴起こしてくるわ」
圭吾はキッチンへ和希はそのまま叶和の部屋に向かった。
「なにぶそくってんだよ」
和希が言う通り、不機嫌な顔と躰から漂うオーラを車の後座席に座り、叶和は発していた。
その後の吉田姉弟の遠慮ないやり取りを助手席から圭吾は黙って聞いていた。
圭吾にはきょうだいはいない。
何回か、義理のきょうだいはいたことがあるが、どのきょうだいにしても思い出しもしたくない記憶だ。
はじめて出来たきょうだいは、義姉だったな、と圭吾が女を嫌いになるきっかけを作ったその義姉の顔は思い出せないが、圭吾を見つめるその視線を思い出しそうになったところで、圭吾はカーステのスイッチを入れ、吉田姉弟の会話を遮った。
「お、悪い」
「あ、圭吾君うるさかった」
「イヤ、全然」
「叶和、喋りかけてくんな」
「イヤ、和希からだって」
その後は会話は少ないが、ぎこちない雰囲気もなく、和希の運転で徐々に見慣れた海道を通り、和希が目的とする灯台手前の松林に囲まれた駐車場に到着した。
叶和は懐かしいと言いながら、和希とこの後の予定を聞いて、浜辺に行くと伝え、スタスタと一人歩きだす。
あ、前にもこんなことがあったな。
この頃には、高校に上がる前の真の屋台にやってきた少女が叶和であることを確信している圭吾は、ニヤリと和希と叶和の後をついていきながら思い出し笑いをした。

