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第10章 萩原 義隆
ケースの中身は、冷凍庫に入れてあったのと同じようなマニキュアの小瓶や、その他諸々の小物が入っていた。

「…そんなに珍しいかしら。」

「え?あぁ、そうだね…女性がマニキュアを塗るシーンなんてそうそう見るものじゃないから…」

菜摘は手際良くクリームのようなものを指先になじませ、しばらくマッサージをして、ケースの中に入れていた、ヤスリや、彫刻刀のような器具で爪を整える。爪の部分だけコットンに化粧水をつけたもので拭き取る。つけたのにもう拭き取るのか….

立ち上がり、冷凍庫から先程のマニキュアを出すと、蓋を開けて塗りだした。

「…マニキュアって、冷やして使うものなんだね…初めて知ったよ。」

「そんなことないわよ。でも、気温と体温の差っていうか、中の水分が蒸発して乾くものだから、ポリッシュ自体を冷やしておくと早く乾くの。」

「なるほど、そういうことか。」

菜摘は左手を塗り終えると刷毛のついた瓶の蓋を左手に持ち替え、右手にも塗る。
それが終わるとまた右手に持ち替え、再度左手に塗った。
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