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第10章 萩原 義隆
同じ色を2度塗り重ね、もうひとつの瓶を手に取ると、それは少し濃いピンク色。
それを爪の中程から先だけに塗り、幾本かの爪の根元にキラキラ光るラインストーンを置いて、最後に透明のマニキュアを塗った。

およそ30分程の全行程を、お茶を飲みながらぼんやりと眺め、余りの手際の良さに感心した。

「器用なもんだね」

「いつもやってるから。」

菜摘がにこりと微笑む。そして小瓶や道具をケースにしまうと、

「義隆さんもやる?」

と私を見た。

「⁉︎」

恐らく、鳩が豆鉄砲を食らったような顔をしていたのだろう。

「ネイルじゃなくて、ハンドケアよ。」

菜摘は可笑しそうにくすくすと笑う。

「いいよ、私は…」

「そんなこと言わないで、絶対気持ちいいから。」

菜摘は急に何かのスイッチが入ったようで、目をキラキラさせて、私も座れと言うように。となりの椅子の座面をパンパンと叩いた。
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