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第31章 わたしは女優

『ひどい…………何なのそれ！



私が家事をしてる時あなたはその子と会ってたわけっ



！？』



妻はヒステリックに怒鳴った。



お玉を床に投げる。



『………………済まないと思ってる』




弱々しく頭を垂れる夫。




『何よっ！私のこと馬鹿にしてっ！！』




美華は怒りと苦痛に満ちた表情を作った。



ーーーー撮影中。



再び＜サレ妻＞の役だ。



だが前回とはーー当たり前だがーー妻のキャラクター



も環境設定も違うのだ。



雰囲気を変えて役作りをし、撮影に臨んだ。




（馬鹿は貴女のほうよ。



夫に怒りをぶつけたら逆効果。



涙だけ見せて泳がせて証拠集めをしてから離婚に



持ち込めばこっちのものなのに）



頭の中では役の女に呆れている。



馬鹿だと思う。



（それに一度の浮気にギャーギャー喚いてどうする




のよ）



（男を知らない女は惨めね）



そう思う。



男と交際したあと結婚し知ったつもりになって



いても、心の襞までは理解してない。



『済まなかった。この通りだ』



夫は土下座する。



その姿に激昂した妻は、



包丁を取り出した。




『何をするんだ！止めろ！』夫が制止する間も無く




妻は自分の左腕を切りつけた。