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あんなこんなエロ短編集
第9章 恋
三久(みく)は、


鏡越しに『彼』を眺めている。


彼の指先が三久の毛先を掴み、


切られた髪がぱらぱらと落ちる。


『彼』は三久の背後を忙しげに移動していた。



ーーーーーあ。左利きなんだ。



そう気付いた。



そして恥じる。



ーーーーーもう4回も通ってるのに、


今気付く?それーーーーーー



「後ろ、このくらいでいい?」


急に『彼』が三久を覗き込み、


肩に力が入ってしまった。



「あ、はい。それでいいです」



ーーーーー銀縁のメガネに、肩までのまっすぐな


長い黒髪。



低い声で淡々と喋る。



喋る度に、大きな喉仏が上下する。



「じゃあ、横を切っていくね」



三久はこくりと頷き、



直ぐーーーーー頷くって子供っぽすぎるかなーーーー



と後悔した。




ーーーーー街外れにある美容室。


あれは春のことだった。



いつもの美容室を予約していたが、



叔父が倒れてキャンセルした。



パニック状態の母から電話があり、小さい頃から世話



になった叔父の元に駆けつけると、



叔父は倒れたのではなく転んで暫く動けなかっ




たんだと快活に笑った。
















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