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快楽に溺れ、過ちを繰り返す生命体
第53章 罠
後からひょっこり現れてバイト感覚で社長にくっついていたガキなんかに任せたら会社が傾くに違いない。

「お言葉を返すようですが…」

鴨志田は沢渡の目を見ながらキッパリと言い切った。

「沢渡さんの仰るとおり達也さんは大学生でまだ19才という若さです。
でも達也さんには古賀社長の血を引き継いでいる方です。
達也さんは古賀社長以上の才覚があります。
後は経験を積むだけです。
そこは私が秘書としてサポート致します。
達也さんなら必ずあの会社を大きくするでしょう」

沢渡はふざけるな、とばかりに反論した。

「冗談じゃない、会社はゲームじゃないんだ、ゲームなら途中で終了してもまた続きから始められる。
架空の世界じゃないんだ、現実の世界なんだよ、会社は!あんな若造に何が出来るというのだ?」

「沢渡さん、時にはゲームのような感覚も必要です。もう少し柔軟なお考えをお持ちになって下さい」

沢渡は不機嫌になり、吐き捨てるように
「鴨志田さん、貴女とはやっぱり一緒に仕事は出来ませんな。どんな考えか解らないけど、私には私の信念がある。
とりあえずいつまでもこんな所で朝っぱらから論議してる暇はないのでね。
早くしないと会社に遅れる。
まぁ、また暇があったらお話しに付き合ってあげますよ」

沢渡は玄関で革靴を履き、ドアに手をかけた。

「沢渡さん、達也さんを社長にしないと後悔なさいますよ?それでもよろしいのですか?」

背中越しに鴨志田の自信に満ちた言葉を聞きながら沢渡は部屋を後にした。

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