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第7章 男の娘(おとこのこ) ―倒錯、或いは迷走―

随分昔の記憶に感じた。実際は5、6年前まであった事なのに。俺が高校に入って間もなく母は家を出て行った。例の変態親父に愛想を尽かしたせいだ。それ以来、俺が母親に会いに行く事はあっても、向こうが親父のところに帰って来たことは無い。そして、この2年は全く会ってもいなかった。彼女はアメリカに留学してカレッジに通うようになったから。

ホントに好き勝手ばかりしてる両親なのだ。俺の苦労が絶えないのも理解できるだろう。

今更、温かい食事の匂いに郷愁を感じて…などとは思いたくなかったが、知らず知らずのうちに熱いものが込み上げてくる。感情を上手くコントロール出来ないのは、クスリの後遺症か。

自分の意識とは別の所で、感情だけが独り歩きしていた。特に孤独を淋しいと意識したことなど無いのに。
 
多分まだ普通じゃないのだろう。そういうことにしておいてくれ…

洗濯物を見詰める俺の視線は虚ろだった。
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