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第7章 男の娘(おとこのこ) ―倒錯、或いは迷走―
「…モちゃん…?トモちゃん…」
気付いたときには、声の主は俺の直ぐ近くまで来ていた。
「…トモちゃん、目ぇ覚めた?気分はどう?」
(…女の子…って…ぁぁ、耿輔の弟か…)
可愛いらしい顔に一瞬驚くが、そこに居たのは耿輔の弟の亨だった。ホント、何も事情を知らなければ、女の子と間違えても不思議はない。それほど亨の女ッぷりは板に付いていた。
「トモ…ちゃん…”トモちゃん”って、呼んでも良いかな…津山さんじゃ、固すぎるし、モトミさんって呼ぶのもなんだから…嫌なら止めるけど…」
「ぁ…別に、どんな風に呼んで貰っても構わないょ…。コウス…ヶ、滝本もトモって呼んでるし」
その呼び方に、俺の表情が一瞬強張るのを見たのか、亨が気にして聞いてくる。
俺が「トモ」と呼ばれるのをあまり好きじゃないってこと、耿輔からも聞いているのかもしれない。その割りには、ヤツは俺のことを平気で「トモ」って呼ぶけど。尤も、今日のバイトの途中では何度か「モトミ」と呼ばれたような気も…