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第10章 暗闇の底に
『っっ……テメェ…っ!!!』



〃よくも・・・〃




オレは…そいつの頭と胸ぐらを掴んで
一気に車から引きずり出した


地面に転がる男に馬乗りになって
力まかせにそいつを殴る





〃よくも…っ…!!〃




『汚ねぇ手でアイルに触りやがって!!!』




鼻が曲がろうが歯が折れようが

知ったところじゃない

絶対に許すことはできない




〃アイルはもっと…こんなもんじゃ…〃




もう、ちっとも…冷静ではなかった


いや…初めから
ただのプッツン状態で

そもそも冷静さなど
持ち合わせてなかったのかもしれない


怒りを込めて拳を振り下ろす



〃アイルの痛みは…苦しみは

・・・こんなもんじゃ〃





『おい!リョウキ!!!

何やってるんだ…っ!!?』




後方からソウタさんの声がした…




と思うと




ソウタさんはオレを羽交い締めして
ソイツから引き離した




失神寸前でのびる男を見下ろして
ソウタさんが言う








『……やはり…こいつ…』





ソウタさんの一言で
オレは全てを理解する





この男は…



この男こそが…4年前に

アイルを傷つけ

人生をメチャクチャにした





あの悪魔…本人なのだ。





アイルが帰り道に襲われたあの日

ソウタさんは実は犯人の顔を

わずかに見ていたのだ



ただ本当に、ほんの一瞬である上に
辺りも既に薄暗く



ハッキリと…確証は持てずに
一人不安に思っていて



もちろんアイルには言えないし

問い詰めたオレにだけ

話してくれたのだった





それが本当なら
とんでもない事になる、と

オレとソウタさんで
アイルを一人にしないように

隙が生じないように
徹底していたというのに…





まさか、こんな白昼堂々と


裏をかかれることになるなんて…


オレも…ソウタさんも思わなかった。






顔も見たことのない…


見たくもなかった悪魔が目の前にいる






今、オレの目の前にいる。






アイルの笑顔・・・人生


アイルそのものを


メチャクチャに壊した男が






あろうことにも 再びアイルを……





オレは

湧き上がるものを

こらえきれなかった。
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