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第10章 暗闇の底に
オレは…そんな出来た人間じゃない


こいつ…



このヤロウ…







『っっ・・・!!!』


『リョウキっ!!!』




オレは

オレを抑えるソウタさんの腕を振り切って

再び男に拳を下ろした




『や…め…』



オレに一方的に殴られてる男が
僅かに声をあげた





『っ…うるせぇっ!!!

アイルはもっと苦しかったはずだっ…!!』







〃アイルはもっと痛かったハズだ

アイルは…もっと

恐くて痛くて…辛くて

沢山のものを失ったアイルは…

もっともっと苦しかったハズだ〃





『クズ野郎!!…っっ殺してやる!!!』




『リョウキ!やめろ!!死ぬぞ!?』




恐ろしいことを
ごく平然と吐きながら

拳を振り上げるオレを
ソウタさんが捨て身で止めてくれた


ソウタさんがいなければ

オレは本当にコイツを

殺していたかも知れない。





『~っっっ・・・!!!』




ソウタさんの怒声で
オレはやっと手を止め
ダランと両腕を下ろした



頭の血管が今にも切れて
ブッ倒れそうだ。



ソウタさんがオレを離す



こんなこと…してる場合じゃなかった。




オレは自分の着ているシャツを脱いで
ソウタさんの白衣の襟にも手をかけた




『……』

『?…。……』





理解したように

ソウタさんがすぐに袖を抜き

白衣をオレに渡してくれる。






『救急車・・・お願いします』




オレは
ソウタさんに背を向けて吐き捨てると
少しよろけながら車へと走った。







車の中は酷いことになっていた





ボロボロに破り捨てられた
衣服らしきものが散らばり…




そして…








全裸にされたアイルが横たわっていた



見るも無惨な姿で…





とてもまともに
目を向けられるものではなかった

アイルに駆け寄って
シャツで身体を覆う





『…アイル?・・・アイルっ…!』





呼んでも応答はなく

ピクリとも動かない。





意識がないのか?…




抱き抱えるようにして

少しアイルの身体をおこして

首筋に手を当てる





…脈がふれた。







アイルは小さく

わずかに呼吸をしていた。




…よかった。
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